

(上)直上からの照明によって馬の躍動感がさらに引き立つ。
(下)光と造形美の競演。照明器具の充実も近年のリヤドロの特色。
(下)光と造形美の競演。照明器具の充実も近年のリヤドロの特色。
バレンシアにおける陶磁器づくりの歴史は、古代ギリシャ人が地中海沿岸に植民都市を建設した時代までさかのぼるといわれる。良質な原石の産出や輸出のための天然の良港という地の利もあり、紀元前1世紀にローマ人が都市国家としてのバレンシアを建設した際にはすでに、陶磁器づくりが基幹産業として機能していたという。スペインにおけるあらゆる産業は、陶磁業に限らず8世紀に始まるイスラム支配と1492年のレコンキスタ(キリスト教徒による国土回復)という、二つの歴史的転回点が興亡の鍵を握ってきた。だがバレンシアの陶磁器文化は、これらの歴史的変遷がむしろ利益の享受のみにつながった数少ない例だ。陶磁器産業の磁場としてのバレンシアは、イスラム教徒たちにとっても魅力的であり、またレコンキスタ時代も戦乱を避けた多くの陶工の移住によって、中世以降のバレンシアは欧州最大の陶磁器産業の地として突出した存在になっていく。詳細は省くがヨーロピアン・ポーセリンアートの歴史に刻まれるオランダの「デルフト」やイタリア・フィレンツェの「マヨルカ」といった銘柄も、製造そのものがバレンシアで行われていた。つまりバレンシアとは陶磁器文化の極の一つとしてあり続ける存在なのだ。こういった経緯からリヤドロがラグジュアリー・ポーセリンアートに特化したブランドとして創業されたのは、しごく自然な成り行きだったといえる。しかしリヤドロが世界最高級のブランドに成長した背景には、意外とも思えるクリエーションの哲学が脈打つ。


(上)透かし彫りの技法によって立体感を浮かび上がらせるランプシェード。
(下)従来のポーセリン製のイメージとはかけ離れた浮遊感も表現。
(下)従来のポーセリン製のイメージとはかけ離れた浮遊感も表現。