PAGE...1|2|3
冬瓜と椎茸、鮑の葛煮椀
鳴門の鮑はミネラルが豊かだ。海底の味わい。冬瓜のさわやかな“野の苦み”。干した椎茸は山の味わい。三味一体の大自然を味わう。

出合いは少々私情がらみだが、実は痛風のキケンがある自分の体に、とても良いからと友人に薦められたことによる。
 アルカリ分の高い源泉水なのに、超軟水という絶妙のバランスのこの水で、試しに出汁をひいてみたら、なんと昆布の灰汁をきれいに中和し、かつおの香りと味わいを見事に引き出した。
 もともとかつお節には軟水が向いていて、昆布にはアルカリなどのミネラルが必要だと感じていたが、この二律背反をクリアする水に出合えるとは思っていなかったので、この時の喜びはひとしおだった。
 あれから半年、盛夏を迎えた先日、いつものように出汁の味を調えていた時、ふと感じた。
 「冬に出合った頃と味わいが違う」と。もちろん僕の舌は絶対ではない。水源も一定ではないだろう。
 しかし、夏と冬で水の味が変わるという考えも、あながち暴論ではあるまい。
 全ての食材に“旬"があるならば、“水"にもまた“旬"があって当然だろう。その水は、化学物質のH2Oではなく、“自然の食材"なのだから。
 そしてその自然の全てを敬愛し、観察し、洞察することが私たち料理人の根源的な仕事なのだ。

元麻布「かんだ」
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布1F  TEL03-5786-0150
PAGE...1|2|3
LINK
GOURMET
神田裕行の椀五十選 第1回
>>2014.1.10 update
GOURMET
神田裕行の椀五十選 最終回
>>2013.12.8 update
GOURMET
神田裕行 真味只是淡 第二十七回
>>2016.11.24 update
GOURMET
椀味不只淡 第18回
>>2013.12.11 update
GOURMET
椀味不只淡 第8回
>>2013.12.24 update

記事カテゴリー