PAGE...1|2|3|4
 客にせよ、料理人にしても〈食〉と対峙するにあたって、限られた自然を受け入れ、その範疇で美味しく食べる愉しみを、今一度見直すべきときに来ている。
 その地とは無縁の希少な食材を求めたり、季節外れの食をして美食と誇るような〈驕り〉は、必ずや自然のしっぺ返しを食うに違いない。今そこにある〈旬〉を素直に味わうことこそが、美食の本来の意である。
 つまり、美食の〈美〉は珍奇や新奇ではなく、今を盛りとする、ありふれたものにこそ潜んでいる。
 美食、あるいはグルメという言葉がひとり歩きを始めて久しい。しかしその真意はなかなか見えてこない。次回はそのことを少し考えてみたい。
かしわい・ひさし 1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。 2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。
『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
PAGE...1|2|3|4
LINK
GOURMET
食語の心 第9回
>>2014.1.10 update
GOURMET
食語の心 第1回
>>2013.11.25 update
GOURMET
食語の心 第52回
>>2017.8.17 update
GOURMET
食語の心 第10 回
>>2014.1.28 update
GOURMET
食語の心 第60回
>>2018.4.16 update

記事カテゴリー