土と育種がおいしいものを育てる
神田さんはこの旅で確認しておきたいことがあった。「フランス最高峰のワイン、ロマネ・コンティの故郷ボーヌ・ロマネ村の地質が丹波と似ているらしい」ということの真偽だ。
「ロマネ村はジュラ紀の地層で、下に大きな石の層がある。そこに届くくらい地中深く根を下ろしている樹齢数十年の古木に実るブドウが、おいしいワインを造ると言われています。日本でそういう所がないかと話していた時、丹波の名が挙がりました。丹波もここでしかとれない特産品が豊富。その点もロマネ村のブドウに通じますよね」。この疑問を土壌学の専門家、神戸大学大学院農学研究科の鈴木武志助教に尋ねた。
「ロマネ村のワイン畑は石灰岩が風化した、つまり枯れて細かくなった土壌です。残念ながら、日本には沖縄以外にこの土壌はありません。丹波の地層図を見ると、川沿いは沖積世第四期で、春日町はジュラ紀の古い地層、粘土質ですね。あと、市島町はちょっと変わっていて泥炭地です。複雑に思うかもしれませんが、関東のローム層は別にして、山が多い日本はどこもこんな感じです」
どうやら地質学・土壌学的にはロマネ村と丹波の共通項はないようだ。しかし鈴木助教は、こう続けた。
「ここでしかとれない作物があるという点で共通するのは、土よりも作る人の気持ちですね。ロマネ村も丹波も、地域に合う在来種を特有の環境の中で何百年と大切に育種してきた。掛け合わせなどをせずに。おいしいもののできる種がここだけで自然と選別・育種されたのでしょう」
「ロマネ村はジュラ紀の地層で、下に大きな石の層がある。そこに届くくらい地中深く根を下ろしている樹齢数十年の古木に実るブドウが、おいしいワインを造ると言われています。日本でそういう所がないかと話していた時、丹波の名が挙がりました。丹波もここでしかとれない特産品が豊富。その点もロマネ村のブドウに通じますよね」。この疑問を土壌学の専門家、神戸大学大学院農学研究科の鈴木武志助教に尋ねた。
「ロマネ村のワイン畑は石灰岩が風化した、つまり枯れて細かくなった土壌です。残念ながら、日本には沖縄以外にこの土壌はありません。丹波の地層図を見ると、川沿いは沖積世第四期で、春日町はジュラ紀の古い地層、粘土質ですね。あと、市島町はちょっと変わっていて泥炭地です。複雑に思うかもしれませんが、関東のローム層は別にして、山が多い日本はどこもこんな感じです」
どうやら地質学・土壌学的にはロマネ村と丹波の共通項はないようだ。しかし鈴木助教は、こう続けた。
「ここでしかとれない作物があるという点で共通するのは、土よりも作る人の気持ちですね。ロマネ村も丹波も、地域に合う在来種を特有の環境の中で何百年と大切に育種してきた。掛け合わせなどをせずに。おいしいもののできる種がここだけで自然と選別・育種されたのでしょう」




(上右)柏原藩陣屋跡。柏原藩の初代藩主である織田信休が正徳4年(1714)に陣屋を造営したもの。文政元年(1818)に焼失したが、まもなく再建され、檜皮葺唐破風の玄関と桟瓦葺寄棟造の大書院は、再建当時の姿をとどめている。
(上左)稲畑人形は氷上町稲畑の赤井若太郎忠常氏が、この地域のきめ細かく粘りの強い土で江戸末期に制作したのが始まり。伏見人形の影響を受けた、鮮やかな色彩が特徴だ。
(下右)一度、廃絶されながらも10代にわたって織田家が藩主を務めた柏原藩。城下町・柏原には戦国時代以来の史跡が随所に残る。写真は瑞光寺。
(下左)丹波市役所・柏原支所。6町合併前は柏原町役場だった。昭和初期の趣を伝える建築として、6年前に保存を目的に改修された。
(上左)稲畑人形は氷上町稲畑の赤井若太郎忠常氏が、この地域のきめ細かく粘りの強い土で江戸末期に制作したのが始まり。伏見人形の影響を受けた、鮮やかな色彩が特徴だ。
(下右)一度、廃絶されながらも10代にわたって織田家が藩主を務めた柏原藩。城下町・柏原には戦国時代以来の史跡が随所に残る。写真は瑞光寺。
(下左)丹波市役所・柏原支所。6町合併前は柏原町役場だった。昭和初期の趣を伝える建築として、6年前に保存を目的に改修された。