

(左)日本にもファンの多いチューリヒのかばんブランド「FREITAG」のブティックは貨物コンテナを再利用。使用済み生地の再利用で知られる同ブランドならではの演出。(右)再開発計画が予定されているチューリヒ中央駅の貨物ヤード。


(左)バーの看板を残したままのスクワット(不法占拠の集合アトリエ)。(右)スクワットに挟まれてそそり立つランドマークのフライターグ・タワー。新旧の地域文化が違和感のない調和を見せる。
「私が幼かったころのヴィアドゥクトは、ダウンタウンながらもまだ産業地区特有の活気に満ちていましてね。労働者たちの豪快な気風が街全体の気質でしたよ。工場が次々に閉鎖されてからは、“ニードルパーク(注射針公園)"とさえ言われるくらい治安が悪くなってしまいましたが、一方ではスクワットのアーティストたちの活動を中心に、先鋭的なサブカルチャー発信の場としても機能し始めるようになったんです」
バルバラさんが語るスクワットとは、アーティストたちによる不法占拠のアトリエのことだ。ヴィアドゥクト地区がそうであるように、1970年代以降の欧州の主要都市が生んだ、過去の産業の遺構としての“遺棄地帯"は、アーティストたちにとっては格好の活動空間でもあった。第一次再開発計画が竣工した現在、以前ほどではなくなったもののヴィアドゥクト地区には主要なスクワットがいくつか残る。「最近ではアンダーグラウンドなスクワットの雰囲気をうまく生かした店も増えてきました。新旧の地域文化が絶妙な加減で調和してると思うんです」とバルバラさん。プロジェクトの開始当初、周辺地域の住民からは「風紀改善の名の下に地域の伝統や文化が去勢され、ヤッピー(都会派のエリート青年層)一色の街になる」ことを危惧した声が少なからずあったという。他の都市の例を見ればその懸念も理解しやすい。
今後、チューリヒ中央駅に隣接する貨物ヤード跡の再開発も予定されているヴィアドゥクト地区。無法地帯の落とし子としての自由空間と健全な風紀、アンダーグラウンドカルチャーと大資本の倫理。ともすれば二律背反に陥りがちな街づくりのビジョンは、やっとその全貌を現し始めたばかりだ。さまざまな思惑が交錯する街づくりの過程にあって、これだけは断言できるだろう。「今、チューリヒで最も熱いエリア、それがここヴィアドゥクト」だと。
●FREITAG
Geroldstrasse 17 CH-8005 Zürich
TEL+41 43 366 95 20
http://www.freitag.ch
バルバラさんが語るスクワットとは、アーティストたちによる不法占拠のアトリエのことだ。ヴィアドゥクト地区がそうであるように、1970年代以降の欧州の主要都市が生んだ、過去の産業の遺構としての“遺棄地帯"は、アーティストたちにとっては格好の活動空間でもあった。第一次再開発計画が竣工した現在、以前ほどではなくなったもののヴィアドゥクト地区には主要なスクワットがいくつか残る。「最近ではアンダーグラウンドなスクワットの雰囲気をうまく生かした店も増えてきました。新旧の地域文化が絶妙な加減で調和してると思うんです」とバルバラさん。プロジェクトの開始当初、周辺地域の住民からは「風紀改善の名の下に地域の伝統や文化が去勢され、ヤッピー(都会派のエリート青年層)一色の街になる」ことを危惧した声が少なからずあったという。他の都市の例を見ればその懸念も理解しやすい。
今後、チューリヒ中央駅に隣接する貨物ヤード跡の再開発も予定されているヴィアドゥクト地区。無法地帯の落とし子としての自由空間と健全な風紀、アンダーグラウンドカルチャーと大資本の倫理。ともすれば二律背反に陥りがちな街づくりのビジョンは、やっとその全貌を現し始めたばかりだ。さまざまな思惑が交錯する街づくりの過程にあって、これだけは断言できるだろう。「今、チューリヒで最も熱いエリア、それがここヴィアドゥクト」だと。
●FREITAG
Geroldstrasse 17 CH-8005 Zürich
TEL+41 43 366 95 20
http://www.freitag.ch