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(上)改装のドラフトを引いたのはオーストリアの俊英アーキテクト工房、オルトナー&オルトナー。(下左)かつて地区の象徴でもあった造船所は、外装をそのままに、映画館、劇場、展覧会場が入る複合文化施設に生まれ変わった。(下右)今や前衛的な演劇の殿堂のようなポジションを確立している。
実は近年まで「ヴィアドゥクト地区」という集合表象は、チューリヒ市民の間のみで通じる否定的な隠語として語られてきた。それは“麻薬"であり“売春"であり、要するに御禁制の代物はおしなべて「ヴィアドゥクト」という枕詞で語られてきた経緯がある。特に750万人の国民総人口中、推定9万人と言われる麻薬患者問題は1970年代以降、スイスの深刻な社会病理としてたびたび国政を動かす議題であった。1994年には「麻薬患者は社会復帰困難な犠牲者」との見地から医師の監視のもと、ヘロイン配給制度が始まるに至っている。これが再開発のいとぐちだとは誰が予想しただろうか? 果たしてヘロイン配給制度と並行して発足したのは「ヴィアドゥクト地区健全化計画」という、現地で麻薬患者を診る医師たちの構想だった。そして「一般市民から隔離された街の風紀を抜本的に変えない限り病巣は絶やせない」という医師団の主張が為政者を動かし、ヴィアドゥクト地区の再開発計画が動き始めた。その後の様相は前述の通りだ。
 すなわちこの地区の再開発は、チューリヒ、そしてスイスの内政的な議題が、世界的な都市再開発の傾向と合致して実現されたプロジェクトと言える。麻薬患者問題の解決策を地区再生に求めるという試みは、現在のところ順調に機能し始めている。ヘロイン配給制度に関しては施行から20 年を経た今日に至っても侃々諤々の論議が続くが、麻薬患者数とそれらが誘発する犯罪件数は確実に減少しているという。そして何よりもこの地区に居を構える世帯の増加、特に子持ちの若い世帯の増加が風紀改善の成功を物語っている。複合商業施設「IM VIADUKT」の市場内に店舗を構えるバルバラさんは、半世紀近くにわたってこの地区の移り変わりを見てきた。

●SCHIFFBAU
Schiffbaustrasse 4 CH-8005 Zürich
http://www.schauspielhaus.ch
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