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車海老のしんじょ
つなぎまで車海老だからこその鮮やかな赤色! 調味料を使わず車海老の出汁を生かした、まさに「100%車海老しんじょ」の濃い味わいがたまらない。車海老は熊本産。今が新物のクチコと小さな蕪を添えて。
「今回の車海老のしんじょも、日本料理ではわりと作るものですが、つなぎに魚のすり身や大和芋などを使っていません。おいしいけど、食材本来の味が柔らかくなってしまうから。それで、ゆでた車海老をすり身状にしたものと生の車海老を合わせて、みそと頭と殻は別にすり鉢ですって裏ごしして海老のエキスをたっぷり出し、しんじょの中に混ぜて仕上げました。言うなれば“100%車海老しんじょ"ですね。また例えば『夏になると鮎の炭焼き』といった定番料理から離れ、生きた鮎を丸ごと、まるで泳いでいるような姿のままに素揚げにし、トリュフのソースで食べる新しい料理を供するなどしています。トリュフのほかにもフレンチやイタリアン、中華で主役になる食材も使います。それは奇をてらうのではなく、あくまでも素材を生かすため。日本料理の枠からは外れない表現をしています」
 こういった“新作"が一朝一夕に出来上がるわけではない。昼や深夜の仕込みの合間に、飽くことなく試行錯誤が続けられての結果である。発想の源は「味の記憶+調理方法によって異なる食材の良さ」。まず大きなイメージを描き、試作を重ねながらおいしさを精錬していく。
「同じ料理はほとんどつくりません。1~1.5カ月ごとにかわるメニューは毎回、旬の食材の組み合わせも調理方法も違います。常に『今のベスト』を考えて表現したいんです。鮑の蒸し煮も今回はキュウリの千切りを合わせましたが、年によっては鮑を煮た出汁をゼリーで寄せたものとか、裏ごしした肝のソースをかけるなど、いろいろです。定番はさっきの鮎の素揚げと松葉蟹のしんじょくらいかな」―「日本料理の良さは食材の生かし方にある」とする小泉氏の心意気は、そのまま伝統を受け継ぎつつ新しい装いを加える神楽坂と通じるものがあるようだ。

●虎白(こはく)
東京都新宿区神楽坂3-4
営業時間17:30(土曜日17:00)~ 22:30(L.O.) 日曜・祝日休み
TEL03-5225-0807
鮑の蒸し煮
鮑は千葉産。軽く酒を振り、少々の水と昆布、大根を入れた鍋で蒸し煮すること2時間半。ふっくら柔らかなおいしさだ。すだちを絞ったキュウリの千切りとともに。口中に初夏の爽やかさが広がる。
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