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出された料理は、鶏のガランティーヌと、イベリコ豚ベジョータのロースト。前者は昔ながらの伝統を守った一品、後者はオリジナリティーを追求したこの店ならではの料理だ。ガランティーヌは、ブレス産の鶏を一枚に開き、中にフォアグラを詰めて巻いてゆで、それだけでも一品になるコンソメスープを贅沢なゼリーにして敷いている。鶏、フォアグラ、コンソメの旨うまみが凝縮されて絡み合う、古き良き時代のフランス料理を感じさせる味わいだ。一方のベジョータのローストは、どんぐりを食べて育った柔らかいイベリコ豚を0・8%の塩に漬けて5日間寝かし、ローストして締め、さらに1000℃以上の鉄板で煙が立たないように一気に網焼きにし、もう一度締めてからサラマンドルでじっくり焼き上げた、豪快にして手が込んだ料理。そこに旬の筍を添え、ソースは塩漬け豚を蒸した時に出るジュースを使用する。中華の手法を取り入れた、新しいフレンチだ。
 大胆にして繊細、老練にしてピュア。谷氏の料理は、一品一品、快い驚きをもってもてなしてくれる。長年、第一線でこられたのは、還暦を過ぎてなお、週6日は店に泊まり込むというシェフの情熱の賜たま物ものだ。
「片時も料理のことを頭から離さず、いかにそれを続けられるかということ。そのくらいじゃなければ、今の時代ではやっていけません」
 渾身(こんしん)の料理に身も心も満たされ、しばらくするとまた谷氏の心地良い魔法にかけられに、足を運んでみたくなる。牛込神楽坂の名店は、こうして今日も多くのゲストを引きつけている。

●Le Mange-Tout(ル・マンジュ・トゥー)
東京都新宿区納戸町22
営業時間18:30 ~ 21:00(L.O.) 日曜休み
TEL03-3268-5911 http://www.le-mange-tout.com
(上)谷氏が大切にする伝統的な技法で作った「鶏のガランティーヌ」。一枚におろした鶏にフォアグラを詰め、フォンでゆでて旨みを閉じ込め、冷ましたものをいただく。口中に濃厚な旨味が広がる極上の一皿。
(下)塩漬けにしたベジョータを煙臭さが出ないように高温で焼きつけ、さらにサラマンドルでゆっくり焼き上げた「イベリコ豚ベジョータのロースト」。トランペット茸を挟み、焼いた後にさっと醤油をたらした京都産の筍とともに。
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