世界の贅沢、NILEの贅沢

もと銀行だった高さ約18ｍの空間に、2階建ての展示場が造られた。壁には、パテック フィリップのシンボルマークであるカラトラバ十字が並ぶ。

その次の部屋からは、パテックフィリップ・ミュージアムから選ばれた数々の貴重なタイムピースの展示となる。最初の部屋では、世界で最も古いと考えられている１５４８年のドラム型時計から始まり、時計機構や工芸・装飾的に特徴のある１２８点もの歴史的時計が並ぶ。これらはパテック フィリップの創業以前のものが多いのだが、部屋の最後にはキャリバー89とスター・キャリバー２０００という、それぞれ複雑機構33と21を搭載する時計史上最高峰のパテック フィリップのポケットウオッチが展示され、燦然（さんぜん）と輝く様子は威風凜々（りんりん）としている。
　サンドリンさんの言葉にもあったように、次の部屋ではアメリカに関連した歴史的時計が展示された。例えば、アメリカ独立戦争に参加したラファイエット将軍やワシントン大統領の肖像入りポケットウオッチ、デューク・エリントンのスプリット秒針クロノグラフやジョー･ディマジオが持っていたタコメーター付きクロノグラフ、ケネディ大統領に贈られた卓上時計などが並んでいる。ここでも、20世紀初頭に最高に複雑な時計を手に入れようという闘いを繰り広げたアメリカの富豪、ヘンリー･グレーブス２世とジェームズ・ウォード・パッカードの持っていた時計に特別なショーケースが用意されていて、熱心に見入る人が大勢いた。