姿形は鰻や穴子に似ているのに、何故鱧だけ生命力が強いのか。水なくしても生きていられるのか。その秘密を探って、たどり着いた答えは。
大抵の魚類はエラ呼吸だが、鱧はそれに加えて皮膚呼吸もできるのだと知った。水から上がって丸1日くらいなら、平気で生きているというから、たしかに魚としては珍しい。今ほど流通が発達していなくても、大阪湾辺りから一日あれば、京の都まで運んで来ることができただろう。
さらに鱧の生命力が強いのは、その餌の食いっぷりにあると言われる。獰どう猛もうとさえ言えるほど、何でも食べる。それはまさに〈食は む〉という言葉がぴったりで、それ故〈食む〉が転じて鱧と呼ばれるようになった。前回ご紹介した鮎あゆと同じく、鋭い顔付きほど旨うまみを湛たたえるのは、それ故のこと。
もう一つ。京都に鱧料理が根付いたのは、卓越した技を持つ料理人が多く居たからである。
無数とも思えるほど夥おびただしい数の小骨を持つ鱧。皮一枚残して、1㎝に、8、ないし9の包丁目を入れることで口当たり良く食べられる。並の技術では難しく、故に産地では疎んじられてきた。
生命力の強さ、骨切りの技を持つ料理人の存在。両者が相あい俟まって、京都の夏と言えば鱧、となったのだ。
さてその鱧。多様な調理法によってバリエーション豊かな料理になるが、時代とともに変遷しているのも興味深いところ。
代表的なのは〈焼き鱧〉。金串に刺した大きな切り身を、鰻の蒲かば焼や きよろしく、たっぷりとタレを付けて炭火で焼く。比較的安価で惣そう菜ざいの部類に入る〈焼き鱧〉が庶民の味方だとすれば、小さな切り身をさっと湯通しし、氷水で冷やした、〈鱧落とし〉は、旦那衆御用達。梅肉と山わ さび葵を付けて食べると、口の中に涼風が吹く。
大抵の魚類はエラ呼吸だが、鱧はそれに加えて皮膚呼吸もできるのだと知った。水から上がって丸1日くらいなら、平気で生きているというから、たしかに魚としては珍しい。今ほど流通が発達していなくても、大阪湾辺りから一日あれば、京の都まで運んで来ることができただろう。
さらに鱧の生命力が強いのは、その餌の食いっぷりにあると言われる。獰どう猛もうとさえ言えるほど、何でも食べる。それはまさに〈食は む〉という言葉がぴったりで、それ故〈食む〉が転じて鱧と呼ばれるようになった。前回ご紹介した鮎あゆと同じく、鋭い顔付きほど旨うまみを湛たたえるのは、それ故のこと。
もう一つ。京都に鱧料理が根付いたのは、卓越した技を持つ料理人が多く居たからである。
無数とも思えるほど夥おびただしい数の小骨を持つ鱧。皮一枚残して、1㎝に、8、ないし9の包丁目を入れることで口当たり良く食べられる。並の技術では難しく、故に産地では疎んじられてきた。
生命力の強さ、骨切りの技を持つ料理人の存在。両者が相あい俟まって、京都の夏と言えば鱧、となったのだ。
さてその鱧。多様な調理法によってバリエーション豊かな料理になるが、時代とともに変遷しているのも興味深いところ。
代表的なのは〈焼き鱧〉。金串に刺した大きな切り身を、鰻の蒲かば焼や きよろしく、たっぷりとタレを付けて炭火で焼く。比較的安価で惣そう菜ざいの部類に入る〈焼き鱧〉が庶民の味方だとすれば、小さな切り身をさっと湯通しし、氷水で冷やした、〈鱧落とし〉は、旦那衆御用達。梅肉と山わ さび葵を付けて食べると、口の中に涼風が吹く。

