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シンプルでおいしい京料理と出合い、“料理心”が目覚めました。

新ばし 笹田 笹田秀信

「魚とご飯が嫌い。薬味は一切ダメ。パンばかり食べていた」――今では考えられないくらい好き嫌いの多い子どもだった笹田秀信が、なぜ料理人を志したのか。「手に職をつけたいと思って、頭に浮かんだのが料理人。日本人なら、日本料理だろう。それだけです」と、いたってわかりやすい答えが返ってきた。
 しかし、その“軽いノリ"が歳月とともに重みを増していく。住み込みで皿洗いのバイトをしながら専門学校に通い、その後は「数軒の店をふらふら」。この間に新橋の京料理の名店と出合い、料理に対するイメージががらりと変わった。「シンプルでおいしい」料理に魅せられ、気づいたら飛び込みで店の戸を叩いていたという。それは「細工に凝った派手な料理がかっこいいと憧れていた」青年が、料理人人生の舵を逆に切った瞬間だったと言える。
「皿洗いや追い回しに始まる修業時代は、朝早くから深夜までの長時間労働。店が早く終わった日も同期と桂むきの練習などをしていました。日頃厳しい先輩が、閉店後も努力する僕らを見て『がんばってるな』と声をかけてくれたのは嬉しかった。大変でもがんばれたのは、仲がいいけどライバルとして切磋琢磨した同期の存在と、それまで理想ばかり追い求めてふらふらしていた自分自身に対する『ここで踏ん張らないとダメになるぞ!』という思いだったような気がします。あと、年を追うごとに、同じ作業を繰り返すことで、体が仕事を覚えていく、料理の奥深さが見えてくる、そこに喜びを見出せたことも大きいですね。それから、大将の接客のすばらしさに感動しました。店の敷居を低くするというか、大将と向き合った瞬間、お客様の肩の力がスーッと抜けていく感じ。いかに和んでもらうか、勉強になりました」
鰤の西京焼きとかますの塩焼き
新年は縁起のいい出世魚の鰤。北海道余市産の肉厚な身と、甘く香ばしい味噌のハーモニーが楽しめる。また、かますは湾内竹岡産。脂が乗った冬のかますは、やはり串を打って塩焼きにしたものが一番うまい。

車海老と蛤の蒸し寿司
半生の車海老と自家製からすみ、鹿島の蛤が“錦糸卵の海”に遊ぶがごとき蒸し寿司。木の芽の緑とともに、春らしい華やかな一品だ。口に入れた瞬間に温もりが広がり、車海老や蛤の柔らかな食感に笑みがこぼれる。
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