世界の贅沢、NILEの贅沢

（上）モナコがどのコースよりも難しいといわれる所以のヘアピンコーナー。それゆえドライバーたちが戦闘意欲を燃やす。
（左）モナコグランプリの際は、街がF1一色に。
（右）フェラーリの赤がモナコに映える。

　急カーブを描きながら狭い道が続く市街地コースを、精悍な面構えのマシンが轟音とともに風を切って疾駆する――Ｆ１レースをはじめモナコグランプリ、モンテカルロ・ラリーなど、世界有数のカー・レースが、ここモナコで開かれる。国を挙げて、モータースポーツを支援しているのだ。とくにＦ１は、「モナコで勝つ」ことが特別な名誉。チャンピオンは公室主催の夜会に招かれ、勝利の美酒に酔いしれる。
　レース・ウィークが始まると、世界からモナコへ、10万人以上もの観客が押し寄せるという。彼らは、スタート地点のモナコ港前に設置されたスタンドや、ビュースポットになるホテルやレストラン、ヨット・クルーザーなどから声援を送り、国全体が、興奮と感動でヒートアップする。Ｆ１は「モナコの躍動」を象徴する、ある種エキサイティングな風物詩なのである。
　加えて、歴代の大公や貴族たちが熱狂した“クルマの競走"は、今も世界最高水準の華やかで優雅なイベント、クラシック・カー・レースとして受け継がれている。
　これら数々のカー・レースを運営する核と位置づけられるのは、世界に名だたる名門クラブ「オートモビル・クラブ・ド・モナコ」である。錚々たる人物が名を連ね、会員数は、世界中に約４０００名！　クラブハウスには、カー・レースに関する膨大な数の写真や書籍などを集めたライブラリーや、会員がクルマ談義に花を咲かせるラウンジ、レストランなどが完備されている。まさにモーター・カルチャーのメッカなのだ。
　レースを終えた翌日はぜひ、“サーキットの夢"から覚めた一般道でドライブを楽しんでみて欲しい。颯爽と走るフェラーリやベントレーなどの高級スポーツカーが行き交う中、レースの余韻に浸れるはずだ。