世界の贅沢、NILEの贅沢

1.　 1889年創業の柴崎牛乳本店。現在の建物は1937年建造。
2.　 1923年創業ののり真安齋商店。現在の建物は1924年に建造。
3.　 長谷の住宅地でひときわ目を引く加賀谷邸は、和洋が絶妙に融合。
4.　 何種類ものコロッケを販売する宮代商店は、独特のたたずまい。

　前述の鎌倉文学館は、佐藤栄作元首相が別荘として利用したこともあり、近隣に住む川端康成らとも交流を深めたという。山々と海に囲まれた庭園やバラ園も美しい。ハーフティンバースタイルでは、銅板一文字葺き切り妻屋根を持つ旧華頂宮邸も有名だ。伏見宮家の分家に当たる華頂博信侯爵邸として1949年に建てられた洋館で、フランス式の庭園を備えた木造3階建ての威厳あるたたずまいが、当時の華やかな暮らしを彷彿とさせる。三菱銀行重役であった荘清次郎氏が1916年に建築した古我邸や鎌倉文学館とともに、鎌倉三大洋館の一つに数えられている。
　鎌倉に洋館を所有した人の多くは、当時、日本の経済、政治、文化を率い、世界ともつながりを持っていた。彼らは鎌倉の恵まれた自然と文化に心身を休め、明日への活力を得たのだろう。建築としての美しさだけでなく、往時の所有者の気概や、彼らがつくり上げた歴史の重みが、洋館の魅力を今も際立たせている。