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生きたまま串打ち。「死んだ鮎の臓器は、“死にたてほやほや”でも苦いだけ。生きた臓器だけがおいしい」と奥田。ピンポイントで“うまさのストライク”を狙う。
これら三条件のうち、どれか一つが欠けても、ズレてもダメだと、奥田は言う。「鮎は“おいしさのストライクゾーン"が極めて狭い」そうだ。
 「焼き方も炭を極端に手前に置いて、その強い火で硬い頭を焼く。そうすると頭の方に脂が落ちて、自分の脂でカリカリになるんです。身は炭の熱源でいけちゃう。で、薄い尻尾は炭火をあおいだ温風で干物みたいに焼く。うちはよそより低温で長く、40分くらい焼きます。それによって香りがよく回るし、水分が徐々になくなってうまみが凝縮されるんです。最終的に空揚げのように、食べた時にバリバリッとなるのが狙ってるところですね。ただ鮎のシーズンになって、1年ぶりに焼けと言われてもムリ。焼き手には解禁日の前に1カ月ほど、1日10本焼かせてます。その間とシーズンに入ってからとで3カ月くらい、私は指導や味見のために毎日、軽く10匹は……ハンパないですよ、鮎を食べる量は」
 まさに体を張って鮎料理に挑む奥田は、「小さい頃は近所の人が釣った鮎をもらって、ガスコンロでサンマのように焼いた、まずい塩焼きを飽きるほど食べさせられた」という。それが23歳の時に京都の鮎専門店で手伝ったことを契機に「うまい鮎」に開眼。さらに「青柳」で“鮎体験"を積み、腕に磨きを掛けた。そして今、奥田の鮎には「いくら食べても飽きないうまさ」がある。

●銀座 小十
東京都中央区銀座5-4-8 カリオカビル4F
TEL03-6215-9544 http://www.kojyu.jp
おくだ・とおる
1969年静岡県生まれ。高校卒業後、静岡の割烹旅館「喜久屋」で日本料理の世界に入り、京都「鮎の宿つたや」で半年、徳島「青柳」で4年、修業を積む。1999年に地元・静岡で和食店を開き、2003年に銀座に進出して「銀座 小十」をオープン。さらに2011年、銀座カリオカビル地下に「銀座 奥田」をプロデュース。2012年には、同ビル4階に「銀座 小十」を移転。今年9月にパリ店をオープンする予定だ。「銀座 小十」は2007年から6年連続『ミシュランガイド東京』で三つ星を、「銀座 奥田」は2011年から2年連続で二つ星を獲得。
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