
表書院の「虎之間」。引見の人や役人等の座席だったこの室には、東・北・西の三方を囲む襖 16面に 8 頭の虎が描かれている。応挙が猫を見て描いたという虎たちは、どこか愛らしく、見る者を和ませてくれる。
五間に、江戸時代の京都画壇を代表する画家・円山応挙が晩年に手がけた障壁画がある。虎たちが襖の前面にせり出すように迫ってくる「遊虎図」、霞に煙る竹薮の中に、隠棲する七賢と三人の童子の姿が浮かび上がる「竹林七賢図」、瀧が垂下して渓の細流とともに波打ちながら流れ込む河川を描いた「瀑布図」……写生の重要性を唱えて円山派をなした応挙の障壁画は、格子戸越しに中庭や庭園と対峙し、静かに美の旋律を奏でるよう。心澄むひとときが、ここには流れている。金比羅参りの大きな楽しみの一つだ。