





(上左)スクリーンの向こうからにじみ出る墨と、山口氏の影、筆跡が集積して一つの山水画が現れる。(上中)山賀氏の“注文”を受けて、制作に挑む山口氏。(上右)走馬灯は夏の風物詩。ゆったりと泳ぐ金魚がそのイメージの一部を担う。他にも古木に咲く桜や野原を舞うチョウなど、日本の四季折々の美しい風景が随所に投影された。(下左)12分間の映像のクライマックスのシーンである「鳥瞰図」には、山口氏とガイナックス、そしてドン ペリニヨンのクリエーションがよく表現されている。(下中)この水墨画にタイトルをつけるとすれば「オーヴィレール山水」。ドン ペリニヨンの聖地が内包する歴史を感じる作品だ。(下右)山口氏が方眼紙に書いた下絵。走馬灯に描くため寸法をきっちり測っている。
記憶は泡のように
7月16日イベント当日、会場となった東京の国立代々木競技場第二体育館に、巨大な回転灯とう籠ろうが出現した。直径7m、高さ1.8mの地上に浮かぶ円環状のスクリーンだ。私たち観客はその中に立ち、流れては消えるさまざまな映像に囲まれながら、時に迫力に圧倒され、時に郷愁に浸り、時に風景と一体になって舞い……実に幻想的な12分間の映像体験に心身を委ねる。それは、自らの記憶を追体験するような楽しさ、自然の中で躍動する興奮とともに心地よい陶酔感に包まれる一時だった。