
大自然の中で暮らしたいというオーナーの願いを受けて、北海道の丘陵地帯の美しさを借景にした家。大きな窓が絵画のように風景を切り取る。(H邸・北見)
平井 基本と伝統は、学んだら一度全部捨てないとダメだと思います。庭の世界では灯篭(とうろう)とつくばい、垣根、この三つにいまだにこだわる。もちろんお客様が入れたいとおっしゃるなら私もやります。しかし「これは入れて当然」という考えを捨てなければ、日本の庭はダメになる。現代の人々はもっといろいろな庭の可能性を求めているのに、悪い意味で基本に忠実、伝統を守っていては、「庭は要らない」と言われてしまうでしょう。
石出 良い意味でのこだわりですね。基本も伝統も知らないで、自分の発想だけでやっていこうというのは、必ず行き詰まりますが、基本や伝統に縛られてその模倣だけでは時代を超える進化が無い。
平井 そうですね。
本物はそれを知る人を呼ぶ口伝えで輪が広がる
石出 では良い庭師を見つけるにはどうしたらいいんですか?
平井 その人が3~5年前に造った庭を見せてもらうことです。年月が経って、その年月が良い形で庭に出ているか、手入れはきちんとされているか。見学に来た人を、庭の持ち主が歓待してくれるかで、植木屋との関係も分かります。
石出 なるほど! 自慢の庭なら、見せたくなる。家ができると施主は必ずご友人を招くので、その家をご覧になった方が「うちもぜひ」と、おっしゃってくださる。うちのお客様はそうやって口コミで広がっているのです。いわば家とお客様が営業してくださっているようで、本当にありがたく思っています。