
文字も全て絵巻に書かれているように精巧に再現している。
年賀に玉鬘邸を訪れた薫が、戸口の前に腰を下ろす様子、庭前の梅に止まる鶯までも完璧に織られている。
年賀に玉鬘邸を訪れた薫が、戸口の前に腰を下ろす様子、庭前の梅に止まる鶯までも完璧に織られている。
恋愛の必須アイテム
平安貴族の恋愛は「和歌でときめく」スタイルだ。歌が下手だと、どんな美男・美女もモテない。男は目当ての女性を恋してやまない気持ちや袖にされた苦しみなどを歌に託して手紙を送り、女はそれに応えて気の利いた歌を返す。恋人たちの交情には、現代の恋愛にはない風雅が求められるのだ。しかも手紙に香をたきしめる、扇にさらさらと美しい文字を書く、といった技巧が凝らされる。和歌と香と扇は、恋愛の必須アイテムなのである。
香りの話は源氏物語に頻繁に出てくる。何しろ光源氏は、覆面をして女の元へ行っても、香りで正体がバレてしまうくらい、いい匂いの男だった。象徴的なのは三十二帖「梅枝」で明石の姫君の入内を記念して薫物合を催す場面。献上された香木や香料の香りが気に入らない光源氏は、二条院の蔵から古来の品々を取り寄せ、それらを原料に一人2種ずつの香りを作らせる。
それを煉香として今に受け継ぐのが山田松香木店だ。煉香とは、粉末にした香木や天然香原料を調合し、蜜・梅肉等で煉り合わせ、丸薬状にして熟成させたもの。火をおこした炭を入れて温めた灰の上に煉香を置くと、何とも言えないいい香りが立ち上る。同店では、煉香「六種の薫物」の販売の他、5個の香炉を回して香りを聞き分ける「源氏体験」や、香原料を好みに合わせて調合し“自分の香り"を作る「煉香作り体験」などを行っている。
また1663(寛文3)年に薬種商として創業した鳩きゅう居きょ堂どうは、宮中御用の合わせ香の秘方を伝授されたという歴史を持つ店。現在も四季をイメージした「黒方」「梅花」「荷葉」「菊花」「侍従」「落葉」の「六種の薫物」を販売している。
平安貴族の恋愛は「和歌でときめく」スタイルだ。歌が下手だと、どんな美男・美女もモテない。男は目当ての女性を恋してやまない気持ちや袖にされた苦しみなどを歌に託して手紙を送り、女はそれに応えて気の利いた歌を返す。恋人たちの交情には、現代の恋愛にはない風雅が求められるのだ。しかも手紙に香をたきしめる、扇にさらさらと美しい文字を書く、といった技巧が凝らされる。和歌と香と扇は、恋愛の必須アイテムなのである。
香りの話は源氏物語に頻繁に出てくる。何しろ光源氏は、覆面をして女の元へ行っても、香りで正体がバレてしまうくらい、いい匂いの男だった。象徴的なのは三十二帖「梅枝」で明石の姫君の入内を記念して薫物合を催す場面。献上された香木や香料の香りが気に入らない光源氏は、二条院の蔵から古来の品々を取り寄せ、それらを原料に一人2種ずつの香りを作らせる。
それを煉香として今に受け継ぐのが山田松香木店だ。煉香とは、粉末にした香木や天然香原料を調合し、蜜・梅肉等で煉り合わせ、丸薬状にして熟成させたもの。火をおこした炭を入れて温めた灰の上に煉香を置くと、何とも言えないいい香りが立ち上る。同店では、煉香「六種の薫物」の販売の他、5個の香炉を回して香りを聞き分ける「源氏体験」や、香原料を好みに合わせて調合し“自分の香り"を作る「煉香作り体験」などを行っている。
また1663(寛文3)年に薬種商として創業した鳩きゅう居きょ堂どうは、宮中御用の合わせ香の秘方を伝授されたという歴史を持つ店。現在も四季をイメージした「黒方」「梅花」「荷葉」「菊花」「侍従」「落葉」の「六種の薫物」を販売している。