「当時の絵巻物は顔料も少なく、退色・剥落が激しいので、そのまま写すのではなく、修復・再生させなければなりません。それを日本画家にお願いして、下図を作ったんです。その下図で紋様織物の設計図である紋図にします。模様の密度に応じた方眼紙を選定し、一目ごとに把釣、つまり彩色をします。方眼は経糸と
緯糸の色の種類を示し、胴と呼ばれています。2色以上の胴を重ねて織り込んだりする場合も多く、紋図はすごく複雑なんですよ。
ただ粗いデジタル画像のようなものですから、細い筆線や色のにじみ、ぼかしを表現するのが非常に難しい。例えば若木の梅の伸びやかな幹の曲線を立体的に、陰影もつけて表現しています。微妙に違う複数な色の細い緯糸を、通常の3倍の織り密度で織り込んでいるんですね。逆に桜花は太めの糸で密度を粗く織り、
ふっくらした感じを出しています」
説明を聞くだけで、その緻密な作業の連続に気が遠くなりそう。特異なのは、紋様織物の技術に、フランスのジャカード織の技術が駆使されたこと。また紋図作りには、三巻からコンピューターが導入された。それにより「色の変更が容易になったし、アナログ技術ではできなかった表現が可能になりました。でも逆に細部までこだわるようになり、前よりも時間が掛かることになった」そうだ。「織るごとに、新たな技術革新になっていった」という。
緯糸の色の種類を示し、胴と呼ばれています。2色以上の胴を重ねて織り込んだりする場合も多く、紋図はすごく複雑なんですよ。
ただ粗いデジタル画像のようなものですから、細い筆線や色のにじみ、ぼかしを表現するのが非常に難しい。例えば若木の梅の伸びやかな幹の曲線を立体的に、陰影もつけて表現しています。微妙に違う複数な色の細い緯糸を、通常の3倍の織り密度で織り込んでいるんですね。逆に桜花は太めの糸で密度を粗く織り、
ふっくらした感じを出しています」
説明を聞くだけで、その緻密な作業の連続に気が遠くなりそう。特異なのは、紋様織物の技術に、フランスのジャカード織の技術が駆使されたこと。また紋図作りには、三巻からコンピューターが導入された。それにより「色の変更が容易になったし、アナログ技術ではできなかった表現が可能になりました。でも逆に細部までこだわるようになり、前よりも時間が掛かることになった」そうだ。「織るごとに、新たな技術革新になっていった」という。


(左)京都鳩居堂で販売されていた、手描きの貝合わせ。平安時代から貴族の娯楽であった。さまざまの貝を合わせ、それに歌を読み添えて優劣を争うゲーム。歌の名手は、恋もゲームもお上手だったに違いない。
(右)象彦が収蔵する几帳蒔絵硯箱。明治から大正期の蒔絵技術の粋を尽くした作品だ。几帳の裏に出番を待つ楽師が描かれる。「説明抜き、五感で楽しんでください」と西村社長。
象彦
京都市左京区岡崎最勝寺町10
TEL075-752-7777 www.zohiko.co.jp
(右)象彦が収蔵する几帳蒔絵硯箱。明治から大正期の蒔絵技術の粋を尽くした作品だ。几帳の裏に出番を待つ楽師が描かれる。「説明抜き、五感で楽しんでください」と西村社長。
象彦
京都市左京区岡崎最勝寺町10
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