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個人海外投資に必要な
国際税務の基礎知識
第18回
永峰 潤 公認会計士・税理士
海外留学・国際結婚と税金

はじめに
 私が留学したのは37年前のことでした。当時は今よりも国際電話は高額だったので、非常時以外は電話でなく手紙の往復で2、3週間かかる、というのがわりと標準的な当時の学生と親のやり取りだったと記憶しています(ユーミンの曲に「青いエアメイル」というのがありますが確かに青い便箋を使ってました)。

 ここ最近はネットで連絡がとれる、更にコロナ以降はZoomなどで動画コミュニケーションが可能になったというところでしょうか。今回は我々の身近で普通に起こることが多くなった子供の海外留学や国際結婚にまつわる贈与や相続の話を取り上げます。

留学時の国外送金
 子供が海外留学している間、親が子供に送金することは普通に行われていると思います。相続税、贈与税の世界では親の扶養になっている者が留学などで日本を離れている場合は、住所が明らかに海外にあると認められる時を除いて日本国内に住所があるものとして扱われます(※1)。

 送金の内容は大きく二つに分けられるでしょう。生活費または教育費に充当するために通常必要とする限度内の送金と、必要な限度を超えた送金です。

 前者の場合は扶養義務の対象たる子供への送金なので殊更に税金がかかることはありません。これに対して後者の場合は必要限度を超えるお金は贈与として扱われます。海外留学などで日本を離れている場合、国内に住所を有するか否かの問題はあるとしても、結局のところ、子供の住所地が国内外を問わず、限度額を超える送金は親から子供への贈与として贈与税の対象になります。

 ご存じの方も多いと思いますが、年間110万円までは贈与税はかかりません。前々回のコラムで取り上げたように、贈与税は暦年課税であり将来の相続税の計算には影響をあたえません(※2)。受贈者が未成年の場合、税率が3000万円を超える部分については55%になるが、300万円超400万円以下の部分は20%であることから、たとえば1年に500万円を贈与すると贈与税は530,000円(※3)となり、10年間続けると総額530万円になります。これに対して1度に5000万円を贈与すると22,895,000円(※3)になり、実に17,595,000円も節税効果があることから、この合法的な節税策を実践されている方が結構おられます(※4)。

 このことは政府税調でも問題視されだしており、近い将来、何らかのメリットを縮減する方向での政策が出されることと予測されます。

(※1)相続税法には明確な規定はないのですが、所得税法の規定では1年以上の期間にわたり国外に居住することとなった個人は国外に住所があると推定されます。
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