

個人海外投資に必要な国際税務の基礎知識 第16回
永峰 潤 公認会計士・税理士
外国通貨交換に伴う所得の発生
はじめに
最近、国税不服審判所(※1)で以前に当コラムで紹介した話題に関する裁決があったので今回はそれを紹介することにしたい。信託の話の続きは次回で取り上げる。外国通貨交換の所得認識事案の概要は以下のとおり。納税者が海外の金融機関との間で締結した投資一任契約(※2)を通じて行った「外国通貨から他の外国通貨への交換」及び「外国通貨で支払が行われる有価証券の購入」について、納税者は単に評価基準が変わっただけであり課税すべき利益は実現していないので、(為替差損益を認識すべき)外貨建取引には該当しないと主張したが、審判所は本件交換及び購入は外貨建取引に該当し交換又は保有の前後で保有状態が異なるのだから、その際に計算される為替差損益は所得として認識すべきとして納税者の訴えを斥しりぞけた(※3)。
審判所裁決は当コラム第1回で豪不動産を購入する際に手元にある豪ドル預金を用いたが、その際の豪ドル購入時と豪不動産購入時の豪ドル/日本円の為替が異なる場合、差額について雑所得等になると紹介したものと同一の結論である。この機会に再度ご説明したい。
(※1)納税者が税務署の行った処分に不服がある場合に申し出(審査請求)を受ける国の機関。最終的な判断は裁決で示され、納税者がその内容に納得しない場合は裁判所に訴訟提起することになる。 (※2)金融機関(投資運用業者)が投資家から投資判断の全部もしくは一部を一任され、その投資判断の権限を委任されている契約。 (※3)不服審判所東京支部「棄却」裁決 令和2年7月1日