プロベート回避手段
「遺言+プロベート(二つが一体となって相続手続きが完結する)」は、時間と費用、プライバシーも保てないため、米国ではプロベートを避けて遺言同様の効果を得られる方法が考案されてきた(これらは遺言代用手続き〈WILL SUBSTITUTE〉と呼ばれる)。代表的なものは五つある。
①死亡時受取人指定銀行預金(pay-on-death〈POD〉bankaccount)
②死亡時譲受人指定証券口座(transfer-on-death〈TOD〉securities account)
③生前信託(生きている間は撤回可能)
④生命保険
⑤各種年金エステートプランニング
本来の意味は説明したとおりであるが、プロベートをいかに避けるかが富裕層の大きな関心事になっていることから、プロベートを避ける相続対策の意味でエステートプランニングの字句が使われることも多い。これらの方法はおのおのが独自に発展してきた経緯があるため、生前信託を除くとおのおのの方法が有機的に関連しているわけではない。この中にはハワイに不動産や銀行預金を保有している日本人が使えるものもある。
POD bank account
本人が銀行の口座を開設するにあたり相続時の受取人(受益者)を指定しておく契約は、米国ではポピュラーな遺言代用手続きである。この契約を結ぶことでプロベートを免れることができるので、米国の銀行に預金口座を保有している方は検討されることをお勧めする。POD口座は口座開設者本人の単独名義なのに対して、夫婦共有名義とするJOINTACCOUNT銀行口座というものもある。JOINT ACCOUNT口座に生存者受取権利(right ofsurvivorship)を付けておくと名義人のどちらかが亡くなった時は、プロベート手続きなく生存者の単独所有となる。
プロベートを避けるという点ではどちらの方法も似たように思えるが、後者の方法は日本の税法上生前贈与とみなされてしまう場合があるので注意が必要である。いずれかの方法を取ってプロベートを免れたとしても、相続人が実際に預金を解約するためには、銀行ごとに定めた手続きを行う必要があるため、あらかじめその手続きを確認しておくことが肝要である。(次回に続く)
本稿のまとめ
☑アメリカでは遺言を作成すると必ずプロベートを経なければならない。
☑プロベートは費用と時間がかかるため敬遠される傾向。
☑プロベート回避として確立された方法がある。
☑日本人もPODは利用可能。

永峰 潤(ながみね・じゅん)
東京大学卒業後、ウォートン・スクールMBA。監査法人トーマツ、バンカーズ・トラスト銀行等を経て、現在は永峰・三島コンサルティング代表パートナー。
nagamine-mishima.jp
東京大学卒業後、ウォートン・スクールMBA。監査法人トーマツ、バンカーズ・トラスト銀行等を経て、現在は永峰・三島コンサルティング代表パートナー。
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