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それは、繰り返すも消費性向の高まりに伴うインフレ率の上昇ということになろう。世界で経済のデジタル化が進むほど、インフレが起きにくくなっていることは百も承知だが、それ以上にカネの価値が下がれば、その分だけモノの価値は上がりやすくなる。
 今年はワクチンの効果も大いに期待され、年後半に向けて世界経済が着実に復活の道をたどり始めると見込まれる。2020年とはまったく異なるフェーズが訪れ、各国・地域の政策、金利、物価、インフレ状況なども大きく変化することであろう。異なるフェーズが訪れれば、少なくとも昨年のコロナ禍でよく耳にした「リスク選好のドル売り」、「リスク回避のドル買い」などといった極めて単純な条件反射の繰り返しパターンは通用しなくなる可能性がある。
 昨年末に向けて世界中でコロナウイルスの感染拡大が勢いづいたことから、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする世界の主要な中央銀行は強めのハト派姿勢を堅持したが、ワクチンの効果が着実に発現し、次第に行動制限措置が緩められていけば各中銀の姿勢もタカ派の方になびきやすくなるだろう。
 まず先に動くのはFRBであると考えられ、その政策方針の転換は強いドル買い要因となり得る。一方で、ワクチンの承認に極めて慎重な日本の景気回復は米欧に比べて少々遅れる。コロナ禍で消えた金利と金利差の概念がよみがえることで、次第にドル高・円安が進みやすくなるというのが筆者の見立てである。
(右)THIS MONTH RECOMMEND・ビジネスはすでにその歴史的使命を終えた⁉
「ビジネスはその歴史的使命を終えつつある」といった衝撃的な主張から始まる本書は、今、さまざまに議論されている「ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)」の導入に関わるすべての否定的見解をも見事に覆す。熟読すれば「UBIの考え方は資本主義の否定ではなく、むしろ労働市場に市場原理をより徹底的に働かせるもの」という主張にも大いに納得がいく。「『資本主義社会のハッカー』となれ」という著者の提案を重く受け止めたい。
『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』山口周著/プレジデント社/1,870円
(右)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。tomotaro-t.jimdo.
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