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 同時に、米国債から株式への資金シフトが急になり、債券価格が大きく下落するととともに米国債利回りは大きく上昇する可能性が高い。コロナ禍がなければ、こうした状況を横にらみしながら、ほどなく金融政策が正常化から引き締め方向になびくのが当然の帰結であり、そうしているうちにバブルは解消、あるいは崩壊するはずであるが、今回はそういうわけにもいかない。やむなく、米金融政策の対応はかなり後手に回ることとなり、しばらくはメラメラと燃え上がるバブルの炎を傍観する格好となるであろう。
 米国の金利が上昇し、同時に株価や地価も強気の展開となれば、当然、そうした市場に日本からの投資マネーも向かいやすくなる。もとより、世界で最も高齢化の進展が速い日本にあっては年金資産運用などの重要性が見る見る高まっており、これまでにも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などが海外債券や海外株式などでの運用比率を高めてきたことは周知の事実となっている
 つまり、日本のマネーが次々に米国を中心とする海外に有効な運用先を求めて旅立っているわけであり、日本のいわゆる「資本収支」はマイナスの幅を広げ続けている。そうしたことが、少なくとも円の上値を抑えることに貢献しているということは、やはり認識下に置いておきたい。そもそも、米国を代表する大手IT企業5社の合計時価総額が東証1部の総計を上回るご時世である。当面の円の上値には自おのずと限界があると見ていいのではないだろうか。
(左)THIS MONTH RECOMMEND・「伝統的な銀行員」はもう要らない…
今や知る人ぞ知る「捨てられる銀行」シリーズの第4弾。相変わらず著者の舌鋒は鋭く、いま猛威を振るっているコロナ禍は「地域金融を二極化する」と断じる。むろん、地域の問題に日々取り組む銀行員が漏れなく本書を読んで正しく理解し、行動することも重要である。そして、同時に各地の中小企業経営者が本書を通じて「いざという時に裏切らない金融機関」を見抜き、選び取る目を磨くということも非常に大切であると再認識させられる。
『消えた銀行員』橋本卓典著/講談社現代新書/1,320円
(右)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。tomotaro-t.jimdo.
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