PAGE...1|2
奇しくもコロナ禍で
世界経済はバブルに
向かう?

田嶋智太郎 経済アナリスト
安倍首相の辞任表明を受け、執筆時の政権与党内では後継の総裁を選出する動きが慌ただしく進められている。
 8月28日に首相辞任の意向が伝えられた直後は、一時的にも日本株が大きく下落し、円高傾向も強まったが、これはコンピューターの自動売買(アルゴリズム取引)によるところが大きかったと考えられる。一国のトップの辞任とあって、市場が一時的に動揺したことも事実であろうが、ほどなく落ち着きを取り戻す公算が大きい。次期首相の政策方針が基本的にアベノミクスを踏襲することは間違いないと見られ、今後も市場参加者らのスタンスにそう大きな変化は生じないと考えられる。
 まして、米連邦準備制度理事会(FRB)は、このほどジャクソンホール会議(年次シンポジウム)で、パウエル議長の講演を通じて「現在の低金利状態を長期化させる意向」をあらためて示した。議長は、今後の新たな金融政策の枠組みについて「平均で2%」のインフレ目標に言及し、景気低迷期にあってはインフレ率が一時的に2%を超えても、しばらく容認する方針を明らかにしたのである。
 少し長い目で見ると、FRBが今回掲げた新たな政策の枠組みによって、米国をはじめとする主要国の経済が将来的にバブルの様相を呈する可能性は一層高まったと言えるだろう。もとより、コロナ禍によって主要国の中央銀行による資金供給の度合いは、かつて例を見ないほどジャブジャブの状態となっている。既報のとおり、日米欧中銀の総資産合計は、2020年末に約2400兆円と、前年末比で約1.5倍に膨れ上がる見通しとなっている。それだけ膨大なカネ余りが市中に滞留しているということである。
 むろん、各国中銀による積極的な資金供給は、コロナ禍による物理的な需要の消滅とサプライチェーンの寸断によって生じたマイナスを一時的に補完し、将来的に回復させるために講じられた策であるわけだが、いずれコロナ禍が終息すれば消えた需要とサプライチェーンの大部分は物理的に復活する部分も大きいと見られる。
PAGE...1|2
LINK
STYLE
「今年もドル安・円高傾向が続く」は本当か?
>>2021.1.20 update
STYLE
当面の円の上値には自ずと限りがある!?
>>2020.11.20 update
STYLE
日本株は早晩、出遅れ修正の局面へ
>>2021.8.26 update
STYLE
時代を読む――原田武夫 第88回
>>2020.9.29 update
STYLE
7~8月は一つの重要なターニングポイント?
>>2020.7.31 update

記事カテゴリー