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昨年、FRBが“予防的な"利下げを3回も実施した最大の要因は米中対立の激化に対する警戒であった。しかし、もはや両国の対立はとりあえず一服している。一方で、依然として米国景気は底堅い推移を続けており、執筆時の米株価も史上最高値水準にある。
 もともと景気や株価が好調続きであるのに政策金利は低い水準に抑えられたままで、さらに懸案だった米中問題も一服、中東情勢に関しては常に偶発的な衝突リスクへの警戒を怠れないものの、それは文字通り“テールリスク"と捉えておいていいだろう。そのうえで米大統領選が近づくにつれ、一層の景気刺激的な政策方針が打ち出されたならば、米国経済は着実にバブルの様相を呈するようになっていくと見るのが普通であろうと筆者は考える。
 気が付けば、ドイツやフランスの10年債利回りは昨年8月をボトムに足もとで持ち直す動きを続けている。一頃、欧州債券市場に過剰に流れ込んだマネーが一気に逆流し始めているのである。つまり、リーマン・ショック以降に膨張したカネ余りが一時期引き起こした「債券バブル」は既に解消に向かっており、ジワジワと世界の株式市場や不動産市場などに向かい始めている。いわゆる「グレート・ローテーション」はとうに始まっていると考えられ、それは最終的に世界的なバブル膨張の引き金となる可能性が高いのだ。
 ちなみに、ドル/円は2015年6月に125.85円の高値をつけて以来、長らく「三角もちあい」というフォーメーションを形成しながらの調整局面にある。足もとの状況から察するに、そろそろ局面変化の時が訪れようとしているように思われてならない。
(右)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。tomotaro-t.jimdo.com(右)お金の側から今の世界経済を眺める!お金の世界では人々が合理的な行動をすることを前提とした経済学の論理が必ずしも通用しない。そんななか「世界が過剰なまでにドルだけに依存した状態を今後も放置し続けてよいものか」、「ユーロを安定的に維持することは可能か」、「民間から生まれた暗号資産に未来はあるか」などといった基本的な疑問に対し、あらためて分かりやすく解説した一冊。お金(通貨)の側から今の世界経済を眺めるという試み自体が非常に興味深い。
『ドル・人民元・リブラ 通貨でわかる世界経済』
中條誠一著/新潮新書/792円
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