往年の名車にインスパイアーされた気概



ジュリエッタ・スプリント・ベローチェを前にレースの成功を喜ぶマッツィオ・ヴィラ社長。機械式時計と同じく定期的なメンテナンスと作動が欠かせないクラシックカーだがマニュアル操作の中に悠然たる時の愉しみがある。
クエルボ・イ・ソブリノスのチームは、昨年に続き今年もマッツィオ・ヴィラ社長が1956年製のアルファロメオ・ジュリエッタ・スプリント・ベローチェに乗り込みレースに参加。この真紅のボディが鮮やかな名車だけでなく、疾走するクラシックカーのフォルムには、いずれもメーカー独自のアイデンティティーがあり、品質だけでなく優美なディテールまで競っていたことを感じさせる。それぞれが孤高の品格を持ちながら愛着を抱かせる美しさは、同社の根源にあるハバナのゆったりとした流麗な時間の観念に同調するかのようだ。1962年にキューバ危機が勃発し、栄枯盛衰の一途をたどった情勢により幻と化したハバナの高級時計ブランドである同社は、40有余年の沈黙を破りふたたび時計界に返り咲いた。そしてクラシックカーレースを支援しながら、生み出した往時の時計を慈しむことを忘却せず、歴史ある時計ブランドとして持ち前の伝統的な意匠をベースに革新する。