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神田裕行の「丹波一閃料理」
Photo Masahiro Goda Text Junko Chiba
丹波でインスパイアされて
(左)菜の花を散らした大納言小豆ご飯。ミルキークイーンの柔らかなご飯に、ふっくら炊いた丹波黒さや大納言小豆の甘み、細く裂いた牛肉の旨味が溶け込んだ小豆ご飯。鍋いっぱいに散らした菜の花のほろ苦さとともに味わう春の料理。(右上)真白な山菜の白和え。丹波の山菜に豆腐という植物性たんぱく質を合わせ、深みのある味を引き出した。ワラビ、ゼンマイ、コゴミなどが雪の下から芽吹く様が表現されている。(右下)以前から一級品ばかり生み出す丹波という土地が気になっていたという神田さん。菜の花の下には大納言小豆を使って、肥沃な丹波の土を表現した。
「丹波でしかとれない」食材の異な味わい。数々の出合いは、神田さんの心象風景の中にどんな「特別な一皿」を描き出したのだろう。帰京して1週間後、選り抜きの素材をふんだんに使った「丹波一閃料理」を披露してもらった。

 「柳田さんの丹波黒さや大納言小豆は、まさに丹波の春日町東中というごくごく限られた地域でしか育たない。丹波の土の象徴だと思いました。そこから生まれたのが小豆ご飯です。帰りがけに車窓越しに菜の花畑を見た時、『土の上に豊かな緑が広がり、その土を掘り起こすと中から丹波の清らかな川の水や伏流水を吸って育つ作物が出てくる、そんな一品を作ろう』と閃きました。お米はもちろん、丹波ひかみ米・ミルキークイーンです」
鍋の蓋を開けた瞬間に、湯気とともに立ち昇る菜の花の香りが、朝霧が厚くたれこめる丹波の豊穣を彷彿とする。そして、しゃもじを入れると、小豆ご飯が力強い存在感とともに迫り上がる。そのほのかに甘い味わいとふっくら柔らかな食感に、丹波の土の恵みが凝縮されているように感じる。「丹波の大地」と名づけたくなる逸品である。
 「旬を迎えた筍と山菜はすばらしかったですね。『冬山の雪の下から顔を出している山菜をイメージした料理にしよう』とか『筍は軽く火を通してすき焼きにしてもうまいだろうな。焼き肉みたいに、七輪で焼くのもいいな。薄切りにして生ワカメといっしょに出汁しゃぶにしてもいけそうだ』とか、次々とインスピレーションがわいてきました」
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