
ヤニック・アレノ
1968年パリ生まれ。
1999年、高名な料理コンクール「ボキューズ・ドール」で銀メダル獲得。
2003年「ル・ムーリス」のシェフに就任、2007年同店に3つ星をもたらす。
2008年、自身の会社を設立し、
マラケシュやクーシュヴェル、ドバイなどでレストランをプロデュース。
料理雑誌も発行するなど、マルチに活躍中。
1968年パリ生まれ。
1999年、高名な料理コンクール「ボキューズ・ドール」で銀メダル獲得。
2003年「ル・ムーリス」のシェフに就任、2007年同店に3つ星をもたらす。
2008年、自身の会社を設立し、
マラケシュやクーシュヴェル、ドバイなどでレストランをプロデュース。
料理雑誌も発行するなど、マルチに活躍中。
-食-
美食家フランス人を魅惑するアニョーの魅力
美食家フランス人を魅惑するアニョーの魅力
Photo Chloe des Lysses Text Yukino Kano
とっておきのフランス料理店の扉をくぐり、支配人に導かれて席に着く。さて、今宵はどんな美味を味わおうか。シャンパーニュをなめながらゆっくりとメニューをたどる。牡蠣、トリュフ、フォア・グラ、ヒラメ、オマール、ブレス鶏、鹿…。その名前を口にするだけで胃が刺激されそうな食材が並ぶ中、ひときわ心惹かれる食材がある。アニョー、すなわち仔羊だ。
食材規定が厳格なフランスでは、“アニョー"と名乗れる羊は、生後300日まで。さらに、生後20~60日のアニョーは、“アニョー・ド・レ(乳飲み仔羊)"と呼ばれ、それ以降のアニョーと一線を画したより高級な品として賞味されている。
「私が厨房で使うのは、基本的に、生後45日までの、体重5 ~ 6キロほどのごく小さなアニョー・ド・レです」と言うのは、ヤニック・アレノ。ミシュラン3つ星を獲得し、パリ随一の超高級ホテル「ル・ムーリス」の厨房を指揮する、今が旬の業界きってのトップシェフだ。
「アニョー・ド・レの魅力は、仔羊のようなつややかな白い肉の色と、繊細な食感。特に、背肉を塊のままごく軽くロティールして、カットしたときの淡いロゼ色は、本当に魅惑的な色ですね。背肉やフィレ肉は、さっとポワレしたり軽くロティール、腿肉ならじっくりとロティール、肩肉なら軽い煮込み、といった具合に、様々な部位で様々な美味しさを味わえます。成長すると消えてしまう喉の部分にあるリ(胸線)もエレガントな内臓として人気の部位ですね。今までに考案したアニョー・ド・レやアニョーの料理は数知れず。ハーブを効かせたフィレ、ソーセージ仕立て、ナヴァランというシチューのような煮込み料理、英国スタイルでフィレを茹でたりすることもあります」
牛や豚が飼育されるよりもずっと以前の太古の昔、古代メソポタミアの時代から、飼育がおこなわれてきたアニョー。中央アジアから中東へと伝えられ、ヨーロッパに広まったという。生贄のシンボルであるのを筆頭に、キリスト教と深いつながりがあるのはご存じの通り。今でも、復活祭にはアニョーの腿肉を食べるのが慣習だ。実際、春になると多くのレストランで、腿肉を丸ごとロティールしてからスライスしたものと、白いんげんを付け合わせにした料理が供され、春の到来を告げる歳時記のひとつとなっている。
ところで、フランスでもっとも美味しいアニョーが育てられている場所はどこなのだろう?
とっておきのフランス料理店の扉をくぐり、支配人に導かれて席に着く。さて、今宵はどんな美味を味わおうか。シャンパーニュをなめながらゆっくりとメニューをたどる。牡蠣、トリュフ、フォア・グラ、ヒラメ、オマール、ブレス鶏、鹿…。その名前を口にするだけで胃が刺激されそうな食材が並ぶ中、ひときわ心惹かれる食材がある。アニョー、すなわち仔羊だ。
食材規定が厳格なフランスでは、“アニョー"と名乗れる羊は、生後300日まで。さらに、生後20~60日のアニョーは、“アニョー・ド・レ(乳飲み仔羊)"と呼ばれ、それ以降のアニョーと一線を画したより高級な品として賞味されている。
「私が厨房で使うのは、基本的に、生後45日までの、体重5 ~ 6キロほどのごく小さなアニョー・ド・レです」と言うのは、ヤニック・アレノ。ミシュラン3つ星を獲得し、パリ随一の超高級ホテル「ル・ムーリス」の厨房を指揮する、今が旬の業界きってのトップシェフだ。
「アニョー・ド・レの魅力は、仔羊のようなつややかな白い肉の色と、繊細な食感。特に、背肉を塊のままごく軽くロティールして、カットしたときの淡いロゼ色は、本当に魅惑的な色ですね。背肉やフィレ肉は、さっとポワレしたり軽くロティール、腿肉ならじっくりとロティール、肩肉なら軽い煮込み、といった具合に、様々な部位で様々な美味しさを味わえます。成長すると消えてしまう喉の部分にあるリ(胸線)もエレガントな内臓として人気の部位ですね。今までに考案したアニョー・ド・レやアニョーの料理は数知れず。ハーブを効かせたフィレ、ソーセージ仕立て、ナヴァランというシチューのような煮込み料理、英国スタイルでフィレを茹でたりすることもあります」
牛や豚が飼育されるよりもずっと以前の太古の昔、古代メソポタミアの時代から、飼育がおこなわれてきたアニョー。中央アジアから中東へと伝えられ、ヨーロッパに広まったという。生贄のシンボルであるのを筆頭に、キリスト教と深いつながりがあるのはご存じの通り。今でも、復活祭にはアニョーの腿肉を食べるのが慣習だ。実際、春になると多くのレストランで、腿肉を丸ごとロティールしてからスライスしたものと、白いんげんを付け合わせにした料理が供され、春の到来を告げる歳時記のひとつとなっている。
ところで、フランスでもっとも美味しいアニョーが育てられている場所はどこなのだろう?