BBCが北海道で
この作品のモデル牧場探し
北海道取材を裏付けるように作中、羊や牧場についての描写もかなり詳しい。ファンの中には、作品の舞台となった地域や、モデルになった場所を訪ね、小説の新たな魅力を探るということをするが、イギリスのBBCが、村上春樹のドキュメンタリー番組を制作するため『羊をめぐる冒険』の舞台であろう場所を探して、北海道の美深町にある松山農場へ取材にきたそうだ。
村上春樹はイギリスの学生にも人気が高く、初期の『羊をめぐる冒険』を好む人が多いとか。
松山農場の主である柳生佳樹さんはホームページ上で次のように記している。
「『羊をめぐる冒険』は松山農場がモデルではないかと申し上げたことがありました。その時、4つの証拠から成り立っていると申し上げました。その後、さらに、この地には、16の滝があること(文中では、12の滝)や、『写真には、羊の群れと草原が写っていた。草原がとぎれるあたりには白樺の林が連なっている。(中略‥)季節は春のように見えた。背後の山の頂にはまだ雪が残っていた。』(文中)などの共通点の発見があり、あまりにも共通点がありすぎて怖くなったほどです」
この松山農場は、日本で唯一、羊乳の生産をメインにした羊牧場で、羊乳のほか、チーズやソフトクリー
ムといった乳製品を販売している。豊かな自然に囲まれた、ぜひとも訪ねたい羊牧場だ。
日本で羊をしっかり観察してその正体を知るには、やはり北海道へ行くしかない。この小説を片手に、“北海道の羊をめぐる冒険"をするのもまた一興だ。作品の別の一面が見えるに違いない。