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1.麻袋に保存された羊の毛。寒い冬を終えた後、初夏に羊の毛を刈る。
2.スーパー・ファイン・ウールのしなやかさは格別。

箱入り娘のメリノ羊は、モーツァルトがお好き?

 極細のウルトラ・ファイン・ウールを作るメリノ羊は、徹底した管理下に置かれる。まず、優秀な雄羊と雌羊の選別交配で、細い毛を生む血統を育てる。同情すべきは雄で、たった5%の優れた種羊を残し(1匹の雄羊で40縲鰀50匹の雌羊と交配できるため)、95%は去勢される。さらに羊に与える牧草の量も緻密にコントロールされる。栄養を必要以上に与えると、タンパク質である毛が太くなり、少ないと毛が凸凹になり、切れやすくなる。適度な草の量と運動が必要になるのだ。メリノ羊を生んだ、スペイン・アンダルシア地方は、酷暑となる夏は、涼しいピレネー山脈で放牧し、雪が積もる冬は麓へ戻る。厳しい環境に対応するための移動が、今に続く優れた品種を生んだ。
 さらにウルトラ・ファイン・ウールを生み出すためのメリノ羊への手厚い世話は人間顔負けとも言える。真っ白い毛を維持するため、外に放牧される時は日焼け止めのコートを被せることもある。小屋ではストレス防止のためにクラシック音楽を流す。オーストラリアの牧場主の間では、モーツァルトが羊に効果ありとまことしやかに囁かれているとか。このような努力を続けても、わずか1000分の1ミリ、毛を細くするために、数十年かかる。メリノ羊と人間の長きにわたる二人三脚は、さらなる進化を求めて、これからも続いていく。

大内輝雄(おおうち・てるお)
1942年福岡県生まれ。繊維業界紙編集を経て1973年3月IWS国際羊毛事務局・産業PRマネージャー、1991年7月広報宣伝部長に就任。著作に『羊蹄記―人間と羊毛の歴史』(平凡社)、『IWSマンスリー』、『ウールの本』(読売新聞社)、『ウール・ブック』(平凡社)などへ執筆多数。
3.細い毛質の羊は珍重される。
4.やわらかな純白のウールはメリノ羊の特徴。
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