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永峰・三島会計事務所の海外投資と税講座
第3回
海外資産保有者は知っておきたいCRSの義務化
今回は、まだ一般には浸透していないCRSについて説明しよう。海外の金融機関に預金や有価証券を保有している人にとって、非常に重要なトピックである。ぜひ、この機会に知っていただきたい。

CRSとは
 CRS(Common ReportingStandard=共通報告基準)とは、OECD(経済協力開発機構)が2014年に提唱し、その年11月のG 20首脳会議で承認された国際的な取り決めである。具体的には、ある国の金融機関の顧客が、その国の非居住者や外国法人の場合、金融機関は顧客口座に関する情報(金融情報)を自国の税務当局に報告し、税務当局はこの情報を非居住者等が居住する相手国の税務当局に、年1回まとめて提供する必要があるとするもの。各国で口座等のデータが「共通化された」金融情報を各国税務当局間で相互提供することで、外国の金融機関を通じた国際的な脱税や租税回避に対処するための制度だ。
 G 20では、2017年もしくは2018年末までにCRSを実施することを宣言し、それを受けて各国で国内法制を整備することとなった。我が国も2015年度税制改正で、CRSに対応する法制度の整備を開始し、その結果、金融機関は非居住者等の金融情報を2018年以降、毎年4月30日までに日本の税務署に報告することになった。それを受けて、同様の情報を有する各国税務当局間で情報の交換が行われる予定だ。金融機関には銀行、証券会社、生命保険会社等が含まれ、これら金融機関が有している個人や法人の氏名、住所や居住地国、TIN(納税者番号)、口座残高、利子・配当の年間受取額等が報告対象となる。

導入のいきさつ
 そもそもCRSが導入されるきっかけとなったのは、2008年にスイスの某大手金融機関が、米国人の顧客に対して脱税幇助したことであり、これに対して2010年に米国政府は、米国市民・居住者・法人が米国外の金融機関に保有する金融情報に関して、金融機関が当該情報を米国税務当局のIRS(内国歳入庁)に報告することを義務化したFATCA(ForeignAccount Tax ComplianceAct)を導入した。
 FATCAは、米国の市民や米国居住者、米国法人を対象とする法制度のため、OECDでは対象者の範囲を各国に金融口座を有する非居住者に広げて同様の制度導入を策定し、その後、既に説明した経緯を経て、2017年2月末現在で、我が国を含む100カ国・地域で2018年までに制度を導入することにコミットすることとなった。我が国の富裕層が金融口座を有することが多い、スイス、シンガポール、香港も2018年の制度導入を表明している。
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