
くすみ・なおき
1972年兵庫県淡路島生まれ。祖父の代から続く左官の家に生まれ、18歳からさまざまな親方の元で修業し、23歳の時に「左官」を設立。伝統的な左官技術に個性豊かなアイデアを生かした作品が国内外で高く評価されている。
1972年兵庫県淡路島生まれ。祖父の代から続く左官の家に生まれ、18歳からさまざまな親方の元で修業し、23歳の時に「左官」を設立。伝統的な左官技術に個性豊かなアイデアを生かした作品が国内外で高く評価されている。
今では、自分で土から練る左官はほとんどいない。だからこそ、久住氏は土にこだわる。
「土壁の土は、細かく、粘土が強いほど強度が増します。竹で編んだ下地に土を塗っていくのですが、中心を強度の強いものにし、仕上げに向かって調整していきます。硬すぎる壁は割れやすくなりますが、強い土と弱い土を混ぜることで、地震や摩擦、雨などに強い壁になるのです」
海外でも、できる限り現地で土を調達する。進行中のシンガポールの仕事では、もともと現地に建築で土を使う文化がなく、材料探しに苦労したが、海辺でヘドロが堆積した土を見つけ、土壁の材料にする。
「ひと昔前までは、左官一人ひとり、使う材料も違えば、練り方も違いました。壁によって最も適した土を練ることが、職人の腕でもあったのです。だから、古いものは今見ても美しいですよね。それが今では皆が同じ土を使うので、仕上がりも平均的になっています」
そもそも現代の土壁のほとんどは、土に樹脂が混ぜられたもの。久住氏の言う〝本物〞ではない。
「土壁は地震に強いだけでなく、土が湿気を吸うので高い調湿効果があります。現代の家は空調をつけないと結露やカビだらけになってしまいますが、壁を土壁に替えれば空調をつけなくてもきれいになっていきます。土壁を見ているだけで、気持ちがいいと感じる方も多いようですね。それほど日本の風土に合うものなのに、失われてきているのです」
職人は今日より明日、と技術を磨く。でもそれだけでは、土壁自体が廃れてしまう危機にある。だから、日本はもちろん、世界中で培われた土壁の文化を視野に入れ、人々が振り向く新しい「壁」を提案する。
「文化財の修復をしていても、100年前や200年前のものを見て、『この時代によくこんなことを考え出したな』と感動することがあります。どんなに職人が努力をしても、一人の人間が考えられることは知れています。先代が少しずつ積み重ねてきたことを引き継いでいく、それが繰り返されて文化になるのです。しかし、文明の変化で、唐突に途絶えてしまうことがある。そうならないように引き継いで、まっとうな仕事をし続けること。僕が本当にこだわっているのは、それだけです」
「土壁の土は、細かく、粘土が強いほど強度が増します。竹で編んだ下地に土を塗っていくのですが、中心を強度の強いものにし、仕上げに向かって調整していきます。硬すぎる壁は割れやすくなりますが、強い土と弱い土を混ぜることで、地震や摩擦、雨などに強い壁になるのです」
海外でも、できる限り現地で土を調達する。進行中のシンガポールの仕事では、もともと現地に建築で土を使う文化がなく、材料探しに苦労したが、海辺でヘドロが堆積した土を見つけ、土壁の材料にする。
「ひと昔前までは、左官一人ひとり、使う材料も違えば、練り方も違いました。壁によって最も適した土を練ることが、職人の腕でもあったのです。だから、古いものは今見ても美しいですよね。それが今では皆が同じ土を使うので、仕上がりも平均的になっています」
そもそも現代の土壁のほとんどは、土に樹脂が混ぜられたもの。久住氏の言う〝本物〞ではない。
「土壁は地震に強いだけでなく、土が湿気を吸うので高い調湿効果があります。現代の家は空調をつけないと結露やカビだらけになってしまいますが、壁を土壁に替えれば空調をつけなくてもきれいになっていきます。土壁を見ているだけで、気持ちがいいと感じる方も多いようですね。それほど日本の風土に合うものなのに、失われてきているのです」
職人は今日より明日、と技術を磨く。でもそれだけでは、土壁自体が廃れてしまう危機にある。だから、日本はもちろん、世界中で培われた土壁の文化を視野に入れ、人々が振り向く新しい「壁」を提案する。
「文化財の修復をしていても、100年前や200年前のものを見て、『この時代によくこんなことを考え出したな』と感動することがあります。どんなに職人が努力をしても、一人の人間が考えられることは知れています。先代が少しずつ積み重ねてきたことを引き継いでいく、それが繰り返されて文化になるのです。しかし、文明の変化で、唐突に途絶えてしまうことがある。そうならないように引き継いで、まっとうな仕事をし続けること。僕が本当にこだわっているのは、それだけです」