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志賀直哉の見た尾道
今も多くの人をひきつけるこの街は、小津安二郎の『東京物語』を始め、数々の映画や文学作品の舞台となってきた。千光寺公園の「文学のこみち」には、尾道に関する歌や作品の碑が25も連なっている。

「のどかさや 小山つづきに塔二つ」 正岡子規

 少女時代を尾道で過ごした林芙美子は、尾道ゆかりの作家を代表する存在だ。『放浪記』から以下の文章を抜粋した碑が見られる。

「景色はいいところだった。寝転んでいていろいろな物が見えた。前の島に造船所がある。そこで朝からカーンカーンと鉄槌を響かせている。同じ島の左手の山の中腹に石切り場があって、松林の中で石切人足が絶えず唄を歌いながら石を切り出している。その声は市のはるか高いところを通って直接彼のいるところに聞こえて来た。」(志賀直哉『暗夜行路』)

 尾道が志賀直哉をひきつけたのも、この街が瀬戸内海の街として、さまざまな時代を紡いできた歴史を持っているからだろう。文中の石切り場は跡しかないが、造船所は今も健在だ。この辺りは、第1次世界大戦中に因島が日本一の造船量を誇ったほど、造船業で栄えた地でもある。そこには遠く、村上海賊のDNAが息づいていたに違いない。
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