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CHRISTOPHE CLARET
KANTHAROS
シングルプッシュボタンクロノグラフで、ボタン操作時にソヌリ機構が連動。コンスタントフォース機構も搭載。非限定数ながら、複雑さに加え調整箇所が多く、関口氏をして「月に2本が限度」と言わしめるレアピース。自動巻き、ケース径45㎜、チタンケース×アリゲーターストラップ、15,540,000円。
関口さんが同社に入社したのは2011年3月。しかしここに至る道のりは困難を極めた。高校時代、時計の魅力に目覚め、壊れた古い懐中時計を安く買い集めては分解・修理しながら独学で時計の機構を習得。大学卒業後、時計師になりたい一心で単身スイスに渡るも、年齢や国籍の壁により、時計学校への入学すらかなわない。しかしスイス国境に近いフランス・モルトーの時計学校の教官宅に居候しながら独学を続けるうち、トゥールビヨンを自作できるまでに。2007年にフランスの国家資格試験に合格。しかしスイスでの就労許可が下りず、雌伏の日々が続く。一時は日本に帰国を余儀なくされるが、その間に現地の友人の尽力もあり、ムーブメントサプライヤーのラ ジュー ペレへの就職が実現したのが2008年3月。最初にスイスに渡ってから約5年もの時間が経過していた。
 3年間の勤務のうちに、同社初のトゥールビヨンムーブメントの完成にも力を発揮した。その腕を見込まれ、クリストフ・クラーレに迎えられたのが2011年。同社では通常“新人"はトゥールビヨンケージの組み立てに2年間従事するのだが、わずか10カ月でそれを終えてムーブメントの組み立て部門に配属。最初に携わったモデルが、2012年発表された「X-TREM-1」。機械式時計の大敵とされる磁気ブロックをあえてムーブメントに組み込んだ奇想天外なモデルが、この日本人時計師によって生み出されたことが、実に興味深い。
 「詳細はまだ言えませんが、次のプロジェクトも始まっていて、それにも関わることになると思います。実は私自身は、19世紀あたりの古い時計が好きなんです。手作りならではの魅力が詰め込まれている。繊細な曲線によって構成された、よりヒューマンでシンプルなモデルが理想です。現在は、そこへたどり着くための勉強をさせてもらっている時期。自分の理想の時計ができたなら、明日死んでも悔いはありません(笑)」
 卓越した技術だけではない。時計の歴史に対する深い理解とリスペクトが、この時計師の豊かな将来を示唆している。今やスイス国内でもこれほどのポテンシャルを持った時計師は希少と言っていい。そんな関口氏の今を「カンタロス」に感じながら、さらなる飛躍に期待したい。

●問い合わせ 
ノーブルスタイリング TEL03-5775-1866
noblestyling.com
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