PAGE...1|2
 周知のとおり、すでに日本政府は28兆円超の規模に上る経済対策の実施を閣議決定し、9月に予定される臨時国会で2016年度補正予算の編成に入る運びとなっている。日本政府が財政に打って出ることは、国際的な要望でもあった。当然、次に国際社会が注目するのは世界経済のリーダー役である米国の出方だ。
 かねてより、筆者は「今秋以降、米国経済の成長度合いはにわかに加速し始める可能性が高い」との見方を披露してきた。それは、米雇用情勢の改善に伴って人々の賃上げ期待が高まり、それが個人消費を活性化させると見られることが一つ。そして、何より11月の米大統領選においてヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏のどちらが勝利を収めたとしても、どのみち新政権はかなり拡張的な財政政策に打って出る可能性が極めて高いと考えられることが大きい。
 すでに、クリントン氏とトランプ氏はともに景気刺激のための財政投入を強化する政策アジェンダを打ち出している。そして近年、米国の財政赤字は急速に縮小してきた。つまり、新政権発足を機に大胆な財政出動に踏み切る素地はすでに整っているのである。
 米国のある専門家は「財政規律に心血を注ぐことは、もはや輝きを失った」と述べている。新大統領の誕生で米国政府が財政出動に大きくかじを切るとするならば、やはり、いたずらに先行きを悲観し過ぎることは慎みたいものと思われる。
(左)圧倒的な臨場感のあるノンフィクション
シンガポールを主要な舞台に繰り広げられるノンフィクションのストーリー展開は圧巻。世間にはあまり知られていない過去の実話や実在する人物の横顔に触れることで、本書のメッセージには比類のない臨場感がある。近年、国税庁は富裕層が持つ海外資産の把握に本腰を入れはじめた模様である。著者の言うとおり、税務情報は政府や国税当局だけのものではない。誰もがそれぞれの立場で足元の変化を知り、今後の行方を見定めたい。
『プライベートバンカー カネ守りと新富裕層』清武英利/講談社/ 1,728 円
(右)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。 tomotaro-t.jimdo.com
PAGE...1|2

記事カテゴリー