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金融コラム 田嶋智太郎 経済アナリスト
世界経済の先行きを決して悲観しない!
 8月に入ってから豪州が利下げを実施し、英国も包括的な金融緩和政策に踏み切った。日銀が9月の金融政策決定会合で大胆な追加緩和に踏み切ると見る向きもあり、米国を除いた主要な国々の金融政策は総じて甚だ緩和的である。それは世界的に低インフレ・低金利の状態がなおも続いているからであり、それは多くの国や地域において経済がなおも不活性化した状態にあることの裏返しでもある。
 専門家のなかには今後、世界全体が長期的な停滞局面に突入する可能性が高いと悲観する向きも少なくはない。「資本主義はすでに終わったか、じきに終わる」などと唱えるエコノミストもいる。果たして、本当にそうなのであろうか。
 近年、世界的に労働生産性の伸びが低下していることを示す統計データが少なくないことは事実である。しかし、最近は「統計データ自体が間違っている」と主張する向きも多い。いささか使い古された統計データは、新しい製品やサービスがもたらす生活水準の上昇を捉えていない可能性が高い。ちまたでは「第4次産業革命の時代が到来した」などと言われているにもかかわらず、その“革命"がもたらしている生産性の向上や企業の収益拡大がいまだ数値に反映されるようになっていないケースも大いにあろう。
 振り返れば、リーマン・ショック後に主要な国や地域の中央銀行は非伝統的と呼べる大胆な金融政策を次々に実施し、世界中に膨大なマネーがばらまかれることとなった。しかし、そのマネーは今のところ“死蔵"されているケースが多く、このまま放っておけば確かに資本主義が危機的状況を迎える可能性もある。もちろん、そこは政策の出番であり、その政策というのはズバリ!財政政策ということになろう。
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