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金融コラム 田嶋智太郎 経済アナリスト
日本の政府・当局による経済対策は「損して得をとる」!?
このところの日本の景気は、よく言えば「足踏み状態」。より現実的には、今年1~3月期の実質経済成長率も昨年10~12月期に続いてマイナスに落ち込むと見られており(執筆時)、中には「4~6月期もマイナス成長が避けられない」と見るエコノミストさえいる。そんな中、日銀は4月末に行った金融政策決定会合において、追加的な対応策の実施を見送る判断を下した。この決定を受け、直後から外国為替相場では大きく円高が進み、戻り歩調をたどっていた日経平均株価は急落。一見、非常に残念な出来事であったようにも思えるが、実際には明日の希望につながるいくつかの側面が、そこに見え隠れしていることも事実と言えよう。
 それは一つに、今後もしばらくは「ドル高是正の流れが続く」ということである。周知のとおり、米国の景気は世界の中で最も強い回復基調をたどっているが、結果としてドル高が進み過ぎると、実にさまざまなところにゆがみが生じてしまう。ドル高で米製造業が打撃を受ければ、米国の需要をあてにしていた世界経済全体にも悪影響が及ぶ。ドル高は米経済の重荷となるだけでなく、ドルと連動しやすい中国人民元高や原油価格の下落につながり、金融市場全体のムードを冷え込ませてしまう可能性もある。さらに、過度なドル高は中国など新興国の経済に悪影響を及ぼし、世界経済全体を不安定な状態にしかねない。
 実際、この数カ月はドル高の是正が全体に進んでいることで、新興国の景気や国際商品相場も徐々に持ち直し始め、金融市場全体にリスク選好ムードが広がっている。無論、それは日本経済にとっても好ましいことである。世界経済のリスクが低下することは、米国経済の成長加速を促し、同時に米国の追加利上げに一歩近づくことでもある。結果、いずれ実際に米国経済の成長が加速し、米利上げのペースが早まれば、より自然な形でドルが本来の強みを取り戻し、ひいてはそれが日本経済の持ち直しにもつながろう。
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