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アベノミクスの限界
さて、我が国、ジャパンの経済はどうなるか。私も今年の前半までは楽観的に見ていたが、7月あたりから悲観的にならざるをえない様相を呈してきた。さまざまな問題の中でも安保法制は大きい。これにより安倍政権の支持率が急落し、国民の“アベノミクス離れ"が広がっている。
 一方で、日銀総裁の黒田さんはひたすらデフレからの脱却を目指して、一万円札を刷りまくった。けれども2年を経て、またデフレに逆戻り。一万円札の山だけが使われないまま残ってしまった格好だ。これはゆゆしき事態。「2016年はアベノミクスの限界を思い知らされる年」になると、私はにらんでいる。
 加えてまずいことに、安倍首相は自民党総裁に再選されてすぐ「アベノミクス・セカンドステージ」などと言い始めた。「一億総活躍社会」なんていかにも国民にこびるような言葉まで飛び出した。ファーストステージの肝心要の成長戦略に関してろくに結果が出ていないにもかかわらず、である。これではゲームの途中で、いきなりリセットしたようなものではないか。海外でも「フェアではない」と大変な不評を買っている。
 だから国民としては、アベノミクスが失敗した場合に備える覚悟も必要なところ。ファーストステージで何となく「うまくいけば、日本株がどんどん上がって、金のいい循環ができるんじゃないか」と思った、その期待感が崩れる可能性は高い。そうなると日本経済は、好調なアメリカ経済についていけず、中国と共倒れになることもあり得るのだ。

「悪い円安」が進む

 そうした中で最も怖いシナリオは、世界のマーケットがアベノミクスに不信任投票をたたきつけることだ。
 つまり「日本はダメだ。円なんか持っていてもダメだ」と、円が見切られて売られ、「悪い円安」が進む恐れがある。今はたまたま一時避難的に円が買われているものの、2016年は対ドルで130円とか140円にまで円安になることも、想定しておいたほうがいい。

円とユーロはQE合戦

 またユーロに対しては目下、ECB(欧州中央銀行)と日銀がユーロ札と一万円札の刷り比べをしている状況。マラソンで言えば、ドルが1位を独走し、円とユーロが2位、3位のデッドヒートを繰り広げているといった感じだ。まさに「日銀・黒田総裁とECB・ドラギ総裁のQE(量的緩和)合戦」である。
 おそらく黒田総裁は、近いうちに追加緩和に踏み切るだろう。8、9月の消費者物価上昇率がマイナス、しかも2期連続でマイナス成長とあっては、何も手を打たないわけにはいかない。とはいえ、これまで国債を買いまくってきて、もう買う国債がない。株やETF(上場投資信託)を買い増すといっても、中央銀行が露骨に大量買いするのは禁じ手だ。そもそも追加緩和も2回、3回と続くと、効果は逓減する。とりあえず「やります」のインパクトに頼るしかなく、残念ながら効果は期待できそうもない。
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