
チェン氏のアトリエにて。
時代に生み出されたIdentity
キャンバスを縦横に走るダイナミックな筆遣いや、油彩とは思えないほど繊細で深遠な滲みやぼかし。独特のリズムと味わいを持つ作風は、チェン自身がその半生の中で獲得したものだ。1963年、天津に生まれたチェンは、文化大革命という激動の真っ只中で育った。そして中国の最難関、北京中央美術学院で伝統的な中国絵画を習得するが、その後1987年、天安門事件の2年前にパリへと移り住み、名門エコール・デ・ボザールで本格的に西洋絵画を学んだ。基礎から徹底的に叩き込んだ技術をいかし、豊かな感受性のなかで触れた感動を作品へのエネルギーとして昇華しているのだ。パリでチャンを見出した、ギャルリーためながの為永清嗣社長は言う。「彼の作品は、理屈や蘊蓄では語れません。どう感じていただけるかはお客様次第。まずは、実際の作品を見て楽しんでいただきたいと思います」