
クレモン―自然環境と共生する庭園
ジル・クレモン設計の庭園もヌーベルに劣らずエコロジー志向に富み、かつ現実的だ。18,000m²におよぶ庭園には芙蓉等の灌木が植樹され、その周囲をオオバコやギョウバシギといった雑草が覆う。こうした、一見、自然環境になんら手を加えていないかのような植生態をフランス人の造園家が設計したという事実は、大きな意味をもつ。西欧の伝統的な造園美においては、ベルサイユ宮殿の庭園設計のルノートに代表されるフランス庭園が人工的な自然改造の極みであり、また究極の具現例とされてきたからだ。さらにクレモンは自らの理想たるビオトープ完成のために、大きな仕掛けを用意した。人工的ながらせせらぎを設計したのだ。そこには葦やガマノホ等の水生植物が自然に近い形で植樹され、世代交代が可能な生態系形成の環境が用意された。