ヌーベルが具現化した都市型エコロジー
コンクリートベースの壁面は腐葉土層に覆い隠され、それを苔やシダといった『否人工的』な植生態が覆う。この試みは、現代建築のイメージとして定着していた無機質という印象をみごとに覆したといえる。同時に、時代の要求への一回答例として、都市型のエコロジーの具現例を示したことは今後さらに大きな意味を持つであろう。都市温暖化の影響が著しい東京都では、「敷地面積1000平方メートル以上の民間施設と、250平方メートル以上の公共施設を対象に、ビルを新築したり改築したりする場合に屋上緑化を義務付ける」という旨の条例を、2001年より施行している。だが、あくまでそれは屋上に限った条例であり、建築物の立方面積において大部分を占める壁面には適用されていない。ヌーベルが具現化した雛形が今後、世界のエコ・アーバニズムにおいてどのようなリフレクションをもたらすか興味深いところだ。
