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①「よそで作れないからブランドになる」―在来種を復活させた柳田さんは、莢を手で揉み、小豆を天日に干し、一級品を作り上げる。②「大納言は殿中で抜刀しても切腹を免れる」ことから、煮ても割れないこの小豆は「大納言小豆」と名づけられたという。③柳田さんの作る丹波黒さや大納言小豆は、収量がごくわずか。「あずき工房 柳田」で手に入る。豆のほか、奥様の明子さんが煮たあんこで作ったおはぎや小豆入りドーナツ、赤飯、小豆みそ、小豆茶なども揃う。
あずき工房 柳田 TEL0795-75-1249 http://www.kurosaya.jp
丹波の達人たち
丹波黒さや大納言小豆の遺伝子を、
守り育てることがロマンなんや
丹波の名峰の三尾山。その山裾に位置する春日町東中では、この地域でしかとれない小豆がある。丹波黒さや大納言小豆――。
 明治の終わり頃から小豆栽培が衰退していく中、品質の良さを知る農家が自分たちの楽しみとして細々と作り続けてきた在来種である。その丹波黒さや大納言小豆に再び光が当たったのは11年ほど前のこと。最高の小豆を求めて、あるテレビ番組が取材に来たことがきっかけだった。
 「そう言えば、母親が『これはおいしい小豆なんや』と一升瓶に保管していた“特別な小豆"があった」
 そう思い出した柳田隆雄さんは地域で「黒さや会」を結成し、「伝家の宝刀」を抜いたのである。
 「もともとは建具師で、小豆栽培は畑違いやったけど、やってみて種の不思議さに惹き込まれたね。同じ種を似たような立地条件の所で植えると、最初の年はまぁまぁ同じようなもんができても、次の年から形状も色合いも味も違ってくる。ましてや、よその種をここに植えようなんて思いもよらん。子どもの時からじいさん、ばあさんに『ここでとれた種をここで育てんとアカン。別物になる』と伝え聞いてるしね」。
 柳田さんが丹精込めて作る丹波黒さや大納言小豆は、その名の通り、完熟すると莢が黒く変化する。中の小豆は全体に光沢を帯びた鮮やかな色で、形は四角っぽい俵形。表皮が薄く、煮ると指頭大ほどに膨らむ。また煮詰めても型崩れせず、食べた後にかすが残らず、ふっくら柔らかな甘み豊かな味わい。――柳田さんらの情熱が育てる丹波黒さや大納言小豆は、これからもすばらしい命の火を燃やし続ける。
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