

(右)ベントレー モーターズ創始者のウォルター・オーエン・ベントレー。(中)クルー工場には、祖父の代から務めるという職人も多い。 (左)ベントレーはモータースポーツにも積極的に参戦。ル・マン24時間では1927年より4連勝を飾るなど、長距離走行および高速域における信頼性の高さを証明した。
手にしたのは偉大なる遺産
ベントレー モーターズは1919年、W.Oベントレーが設立した高級スポーツカーメーカー。自動車史にも残る、優れた高級GTの数々を世に送り出した名門だが、その歴史は複雑だ。世界大恐慌後の1931年、ロールス・ロイスに吸収合併され、’90年代には世界的な経済悪化を受けて、当時ロールス・ロイスを所有していた英国ヴィッカーズ社がロールス・ロイスの売却を発表。BMWとの買収合戦の末に、フォルクスワーゲン(以下VW)がこれを買取る。ところがフタを開けてみると、実はロールス・ロイスの商標権は航空機エンジン会社「ロールス・ロイスPLC」が所有しており、この会社は航空分野でBMWと提携していた。そのため、ロールス・ロイスの商標権はBMWへ移り、ベントレーおよびロールス・ロイス所有のクルー工場はVWの傘下となった。この時、クルー工場が誇る技術と職人、さらにコーチビルダーの名門マリナーはベントレー モーターズに継承された。これは、ベントレーにとって偉大なる財産となったのである。
