


「いままでの普通の集合住宅にはない暮らし方があるのではないか」という点から生まれた木をいっさい切らずに完成した集合住宅。構造壁から鳥の巣箱のような部屋が突出している。
他の建築と異なる出発点
「目黒近くに建つ富裕層向け集合住宅です。敷地の傾斜地部分に、林のように木が植わっていました。普通は木を伐採して、土地の中央に建物を建て、余ったところに植樹します。でも僕は木を切ることに戸惑いを覚え、木をいっさい切らずに最大容積を獲得する方法を提案しました。まずは、試掘して根の位置を調べ、よけたギリギリのところに構造壁を建て、壁から林に向かって突き出した巣箱のような部屋を考えました。レーザーポインタで枝を測量し、三次元データにして台風時の挙動を調べ、どんなに強い風が吹いても枝に当たらない位置に部屋を配置しています。木にものすごく隣接して建てることが、生活の付加価値を生み出しているのです。自然を征服するのではなく、共に暮らすという日本的な自然観をもった建築形式が、施主にも、入居している外国人にも受け入れられました」。