彼の凄さは、日本の美に対する審美眼と現在まで残る三溪園を完成させるに至った財力にある。時代の先を読み、経営の近代化と国際化に力を入れ、実業家として成功する一方で、横浜東南部の広大な土地に古建築の美術館ともいる庭園を創り上げ、後に日本を代表する画家に大きな刺激を与えた。事実彼の創り出す庭園に惹かれ、横山大観、芥川龍之介などの文化人も訪れている。また前田青邨の「御輿振り」、横山大観の「柳蔭」、下村観山の「弱法師」など近代日本画を代表する多くの作品が園内から生まれている。まさに、三溪は日本の近代美術誕生の一役を担ったプロデューサーであり、そのプロデューサーが生涯をかけて創り上げた作品が三溪園である。伝統音楽とともに、三溪の「美の世界」に浸り、月見を楽しんでみてはいかがだろう。
