
変わらざる日本料理の原点
「日本料理の技について魚の炭火焼を例に話せば、ま
ず魚は、身と皮の部分とでは焼き方が違います。皮は
思いきりよくパリッと“焼く”。身は、焼くというより熱
をじんわり中に伝えるイメージ。熱でまわりを包みこ
み、蒸し焼きにするんですね。こうすることで適度に水
分が保たれ、外側は香ばしく、中はみずみずしくて旨
みもある絶妙の仕上がりになります。一方、全身が皮
で覆われている鮎などはまた焼き方が異なるし、魚の
状態や部位によっても変わります。よく、温度は何度
で、時間は何分かなどと聞かれることがありますが、
数値じゃないんですよ。その時々で魚を見て見極める
しかない、均一なルールはないんです。私たちはいつ
も、素材を見て答えを出す。あくまでも素材にたいし
て、理をはかるのです。これが日本料理の原点です」