



胸像のほか、彼女の愛用品が館内に並ぶ。マリー・アントワネット胸像、1781年。(c)Photo Rmn、マリー・アントワネットのハープ、1774年。(c)Musee municipal de Vendome / Francois Laugini、ランブイエ乳
製品加工所のマグカップ、1787年。(c)Photo RMN / Martine Beck-Coppola、日本漆製の扇形の箱。(c) Photo RMN / Thierry Ollivier
王妃という栄華、自由への意思
華麗、絢爛。贅をつくしきった調度品や美術品が立ち並ぶ第二展示室では、フランスに嫁いでからの彼女の壮絶
な華やぎぶりを見せつけられる。とくに1774年のルイ十六世即位により王妃となってからの彼女は、宮廷の伝
統的な形式を簡素化し、お気に入りの若い貴族を目立って優遇、ファッションにも新風を吹き込み、常に革新を
進める中心であった。彼女が政治に関与することを好まなかった夫、ルイ一六世は、むしろ彼女を放任してその
他の関心事へ導いた節もある。ひいては妻にプチ・トリアノン離宮を贈り、彼女は隠れ家としての楽園を、彼女
のみが統治する王国を手にする。お気に入りの貴族だけが出入りを許され、伝統的なコードは一切無効な領土。
農村集落を模倣した庭園、ベルサイユの栄華を否定するかのシンプル・ライフという選択。民衆からはその浪費
ぶりを、旧態貴族からは、おしなべて伝統に一線を画す意思という彼女の自由が、攻撃の的となった。