
一方、路面電車発祥の地ドイツでは、異なる見地から市電の有用性を見直しつつあった。交通渋滞もさること
ながら自動車の大気汚染対策として市電に着目したのだ。加えて、戦後の欧州各都市が直面したドーナツ化現
象〜交通インフラがモータリゼーションに対応できない市中心部の空洞化〜対策として、トランジットモール
空間の構築に有効であることが様々な検証を経て証明された。トランジットモールとは、市中心部から自動車
を締め出した歩行者を基本とした都市空間の概念である。今日では世界中の都市で採用されている都市中心部
の活性策だが、ドイツの場合は、このトランジットモールに補完交通機関として市電を組み入れたのが出色で
あった。