

パリの市電【後編】——
今後の展開
今後の展開
Photo&Text Shun Kambe
都市中心部活性の鍵を握る存在に
大都市における市電復活の気運は近年、世界的な傾
向といえる。だが、1970年代までは、「併用軌道上を自動
車とともに走行する市電の存在が交通渋滞を招く」と
いう市電害悪論が、半ば正論のように唱えられてい
た。パリ市は、この市電害悪論の先鋒として1938年、世
界に先がけて市電を廃止した経緯がある。以降、モー
タリゼーションに直面した世界の大都市もそれに追
随するように、次々と市電を廃止していった。当時は世
界共通の論調として道路交通事情悪化の根源として
扱われていた市電であったが、市電の廃止による道路
事情の好転という結果が報告された都市は皆無であ
った。パリが世界にさきがけて論陣を張った市電害悪
論は、交通渋滞の根本的な解決策になり得なかったの
だ。